岩壁画は、雨季の間にアボリジニの人々が住まいとした岩山の壁に、彼らの精神世界の核であるドリーミング、すなわち、創世神話を、次世代に伝えるために描いたものであり、樹皮画や絵画などのアボリジニ芸術の源泉の一つとなった。
この岩壁画にも、「死と再生」や「雨と豊穣」を司る精霊「虹ヘビ」が中央に大きく描かれ、その腹中には飲み込まれた男女の精霊が描かれている。また、骨格や内臓が透けて見える、いわゆる「レントゲン画法」によるカンガルー、ワニ、ゴアナ、バラマンディの他に、首長ガメ、岩の隙間に住むと言う超スリムな精霊ミミ、巨人ルマルマ、狩人、さらには睡蓮の花や根も見え、これらはすべて、この地域のドリーミングに登場するキャラクターである。また、岩肌にあてた自分の手の上から口に含んだ顔料をエアーブラシのように吹き付けて描いた手形が中央左端に見えるが、これは作者のサイン代わりだと言う。このように、土台はレプリカだが、描かれているのはまさに現地の岩壁画そのものなのだ。
幅2メートル、高さ2.5メートルもあるリアルなこの岩壁画は、アボリジニ関係の展示会にもしばしば貸し出されてきた人気資料だが、移動が大変なため、2001年のオセアニア展示リニューアルを機会にキャスター付きの台を誂えた。恐らく日本国内で唯一の可搬型アボリジニ岩壁画である点が、オタカラとして推薦する所以である。
久保正敏(文化資源研究センター)


