国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

World Watching from Afghanistan  2002年12月19日刊行
石井正子

● アフガニスタン-紛争から復興・開発支援へ

11月17日より26日まで、アフガニスタンを訪れました。目的は、来年1月に上智大学で開催する国際シンポジウム「紛争から復興・開発支援へ:地域研究から実践を考える」の打ち合わせを行うこと。シンポジウムでは、東ティモールとアフガニスタンにかかわる研究者、国際機関やNGOなどの実務家をお招きし、それぞれの復興・開発支援を集中的に議論する予定です。

何を語るにも短すぎた滞在でしたが、その間にもアフガニスタンの乾いた大地に刻まれた戦争の爪痕が目に飛び込んできました。カブールは帰還難民でごった返し、修復をまつ破壊された建物がならび、北部への道路沿いには地雷撤去を知らせる赤いペンキが延々とつづき、無数の戦車が放置され転がっていました。ドスタム将軍が拠点をおく北部マザリシャリフでは、将軍が発行した通貨紙幣が毎晩燃やされていましたが、いたるところに将軍の肖像がかかげられ、ドスタム派の健在がうかがえました。

この戦争の傷跡を快復しようと、今日、アフガニスタン全土で各国政府、国際機関、NGOによる復興・開発支援が展開されています。今回はカブールと北部で、ある日本のNGOの活動を視察することができました。このNGOは、およそ1年間で、カブールと近郊で8つの学校の修復、養鶏プロジェクト、識字教育を行い、北部では約27,000人の避難民支援、4つの学校および道路の修復、コミュニティ全体を対象とした支援などを行ってきました。これまでは、破壊されたものの復旧が支援の中心でしたが、これからは長期の開発を視野にいれたプロジェクトを展開するそうです。

このように、今日の紛争地の復興・開発支援には、各国政府、国際機関に加えて、NGOが積極的に関わるようになりました。結果、国際支援が前例のないほど大きな役割を果たすようになっています。しかし、国際支援が大きな影響力をもつようになった今日だからこそ、当該地域へのかかわりを改めて考える必要があるのではないでしょうか。例えば、復興・開発支援は、アフガニスタンの複雑な民族対立を和平に導くことができるのでしょうか。あるいは、アフガニスタンの長い歴史から切り離された、先進国のモデルを押しつけるものとなっていないでしょうか。国際シンポジウムでは、アフガニスタン支援を通じて地域の知見を蓄積してきた国際機関やNGOの実務家と、アフガニスタンを現地研究に基づいて分析してきた研究者が、それぞれの地域の理解を相互に検討し、地域にみあった適切な支援について議論する予定です。

※この国際シンポジウムは、一般の方もご参加いただけます。

石井正子(地域研究企画交流センター助手)

◆参考サイト
外務省:アフガニスタン支援
ピースウィンズジャパン