国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

今月の見てみんサイト  2003年9月18日刊行
清水郁郎

● 熱狂的口琴ファンサイト探訪

口琴という、手のひらにのるぐらいの小さな楽器がある。細長い薄片を指や紐で振動させ、口腔で共鳴させてビョンビョンと鳴らす。以前、北タイで竹製の口琴をいくつか手に入れた。舌の使い方やほっぺのふくらませかたを工夫するとさまざまな音が出る。

口琴は、英語ではJew's Harpと呼ばれる。世界には、この呼び名でひとくくりにされる楽器が広く分布している。タイも含めて東南アジアのものはだいたい竹製だが、欧米やシベリア方面のものは金属製でかたちも異なる。

日本における口琴演奏と研究の第一人者、直川礼緒さんが主催する日本口琴協会のサイトでは、世界のさまざまな口琴が紹介されている。また、サイト内に併設のウェブショップ、その名もびやぼん屋(!)では、たいへんに凝ったつくりの口琴も買えるというのだから、これはもう口琴好きにはこたえられない。
★ <http://www.koukin.jp/>

この口琴の世界規模の集まりがあることを、北タイの大学図書館に収蔵されていた書籍から知った。恐るべし、口琴。裾野はとてつもなく広い。

2002年にノルウェーで開かれた世界口琴議会&フェスティバルの模様。日本人の参加者もあったようだ。このサイトでは、あわせてノルウェーの口琴も紹介されている。
<http://www.munnharpe.no/fest-2002/main.html>

そして、インターネットの世界にも熱狂的な口琴ファンがやっぱりいた。ネットサーフィンはそれを教えてくれる。まずは、口琴関係の総合リンク集。
<http://www.antropodium.nl/e-worldtraffic%20Jhps.htm#JHPGUILD>

アメリカのJew's Harp Guildという団体のサイト。今年の8月、オレゴン州では北米口琴フェスティバルなるものが開かれたらしい。同サイト内の口琴の歴史と題するページには、この楽器の各国での呼び名や歴史が概説されていて、基本的理解に役立つ。
<http://www.jewsharpguild.org/>
<http://www.jewsharpguild.org/history.html>

フィンランドの口琴協会のサイト。和気あいあいと口琴を愛でる人々。
<http://www.angelfire.com/music/munniharppu/english/index.html>

オランダだって負けてはいない。
<http://site.zeelandnet.nl/paclax/jewsharp>

日本人だって。札幌在住の民族音楽家ハレ・ダイスケさん主催の札幌口琴会議のサイト。口琴ファンのあいだでは聖地(?)とされるロシア連邦サハ共和国にある、ホムス博物館(THE KHOMUS MUZEUM-JEW'S HARP OF THEWORLD PEOPLES)の貴重な画像がアップされているのも、このサイトの売りだ。
<http://jewsharp.hp.infoseek.co.jp/index2.html>

世界には、この小さな楽器を愛でる人がなんと多いことか。そして、口琴に魅せられるのは旅行の途上ばかりではない。よく耳を澄ませば、普段何気なく聞いている音楽の中にも、口琴の音が隠れていることに気づくことがある。

さて、この口琴だが、学問上は体鳴楽器に分類される。東京藝術大学音楽学部小泉文夫記念資料室作成の所蔵楽器目録が、アイヌのムックリを含む世界の口琴を紹介している。ムックリもそうだが、ハォンハォン(台湾)、ゲンゴン(バリ)など、その地域独特の呼び名も楽しい。
<http://www.geidai.ac.jp/~odaka/gcat/index-j.html>

口琴の演奏自体はそれほど難しいものではない。ぼくも、知り合いの民族楽器商から奏法を教えてもらった。今では、すっかり病みつきだ。しかし、世の中にはすごい人がいるものだ。北海道アイヌ民族博物館のサイトにアップされている同博物館伝承課松永八重子さんによるムックリの模範演奏を聴いてほしい。松永さんの超絶技法を耳にした後では、まだまだというのを実感しないわけにはいかないのであった。
<http://www.ainu-museum.or.jp/index.html>
<http://www.ainu-museum.or.jp/mukkuri/mukkuri.html>

今日は民博のショップで買ったドロンブ(ハンガリー製)でも弾いてみようかな。

清水郁郎