国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

今月の見てみんサイト  2004年4月15日刊行
三島禎子

● 世界のガラス絵

「ガラス絵」とは、ガラスの裏から左右逆に描いた絵のことです。ガラス・イコンと呼ばれる聖画像としてご存知の方もあるでしょう。ガラス絵の普及はガラス生産の発達とともに、18世紀以降、西欧から東欧、アジア、北アフリカ、西アフリカへも拡大しました。

インターネットで「ガラス絵」を検索してみると、博物館のサイト以外に画廊も多数ヒットします。古いガラス絵がひょっと発見されたりする楽しみもあります。また現代作家による個人ギャラリーのHPも数え切れないくらいあります。ガラス絵の描き方を紹介する個人サイトもあり、日本では趣味の対象としてガラス絵が知られているということをあらためて知りました。

フランス語の「Peinture sous verre」、英語の「Reverse glass painting」で検索すると、これまた膨大なサイトがあがってきます。日本のサイトの傾向と違う点は、美術学校の専攻科目としてガラス絵という分野が紹介されている点です。したがって、当然、現代美術としてガラス絵を制作する作家が多く、個人や画廊のサイトがたくさんあります。

今回は、ヨーロッパから世界各地へ広がった古い時代のガラス絵の特徴がわかるようなサイトを中心に紹介してみることにしましょう。

まず、日本のサイトで「世界のガラス絵」について総合的にあつかっているのは、おもしろ博物館(城ヶ崎文化資料館)です。世界のガラス絵の分布とその特徴が整理されてあり、とてもわかりやすく説明されています。日本でも江戸時代に浮世絵師が人物像や風景画を描いているんですね。

<http://www.izu.fm/dream/gaasue.htm>浜松市美術館は西洋をはじめ、日本や中国のガラス絵を400点あまり所蔵し、サイトではいろんな画像が楽しめます。
<http://nw01.city.hamamatsu.shizuoka.jp/artmuse/glass/>ダカール(セネガル)の街角にはガラス絵がずらりとならぶ売り場があり、みんぱくのテーマ展示「セネガルの街角」でもその様子を再現しています。
下記のサイトはダカールのガラス絵売り場で働く人たちが出しているもので、数々の画像が楽しめます。
<http://netsouweres.ifrance.com/netsouweres/>(仏語) ガラス絵は今やセネガルでは土産物として人気のある商品です。各地の職人を集めた工芸村にもガラス絵が並びます。下記はセネガルのチエスという街の工芸村のサイトです。
<http://www.senartisanat.sn/Index.asp>(仏語)アフリカのガラス絵はひとつのスタイルを作っており、セネガルはその中心になっています。ダカールの有名作家のもとで学んだガーナ生まれの作家が紹介されているサイトも見つかりました。西欧でアフリカ作家による展覧会が開催されるように、ガラス絵は土産だけでなく、美術としても存在を確立しつつあるようです。
<http://www.aae-ouaga.org/sz.html>(仏語) ガラス絵の普及の背景には宗教の力があります。アフリカではイスラームの拡大とともに、ヨーロッパでは東方教会やカトリックの普及とともに聖画像がおもなモチーフになりました。プロテスタントの地域では聖画像以外のモチーフが特徴です。 クロアチアの作家の特徴は何でしょうか?
<http://www.regart.ch/talent/index2.asp>(仏語) みんぱくの「セネガルの街角」はご覧になりましたか?セネガルのガラス絵を200点ほど展示しています。ネットサーフィングのあとは、是非、実際の展示場へ行っセネガルの作家が描き出している世界を堪能していただきたいものです。

三島禎子(民族社会研究部助教授)