国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

Arabian Nights Countdown !  2004年9月6日刊行
山中由里子
特別展示「アラビアンナイト大博覧会」
2004年9月9日(木)~12月7日(火)開催予定
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/opensesami/index
一般830円(560円)高校/大学生450円(250円)小・中学生250円(130円)
※( )は20名以上の団体料金です。※常設展も御覧になれます。

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◆ Arabian Nights Countdown ! ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

● アラビアンナイト大博覧会まであと 3夜!
特展もいよいよ臨月に入ります。

今回のカウントダウン・エッセーは、9月23日の研究公演でアラブ古典音楽を演奏してくださる「ル・クラブ・バシュラフ」の松田嘉子さんにお願いいたしました。

◆シェヘラザードの気分で、演奏します!

松田嘉子

いよいよ「アラビアンナイト大博覧会」が開幕します。
この特別展では、アラブの古典楽器が紹介されるコーナーがありますが、実際の演奏をお聴きになりたい方は、9月23日の研究公演「アラビアンナイトのしらべ」に是非いらしてください。

プログラム内容は、4つに分かれています。
第1部は、水野信男さん(兵庫教育大学名誉教授)によるアラビアンナイトの音楽や楽器のお話。
第2部は、私たちル・クラブ・バシュラフの演奏。
第3部は、今回このコンサートのために来日されるレバノンのカーヌーン奏者、エリー・アシュカルさんの演奏。そして最後に、ル・クラブ・バシュラフとエリー・アシュカルさんの共演です。ウード、カーヌーン、ナイ、ダルブッカのカルテットなんて、とても楽しみです。エリーさんは、フェイルーズやワディ・アッサフィなどレバノンの大歌手たちと共演し、フランスではサッフォーのオーケストラの指揮者を務め、レバノンとフランスを拠点に、世界的に活躍されているカーヌーン奏者です。エリーさんのオリジナル曲やアラビアンナイトにちなんだ名曲も、一緒に演奏する予定で、乞うご期待です。

ウード、ナイ、カーヌーンといった楽器が奏でられていたという、アラビアンナイトの時代の音楽とは、いったいどのようなものだったのでしょうか。楽譜も(もちろん録音も!)残っていない今日、その様子は想像するしかありません。
でも私たちが演奏している音楽は、その時代から脈々と受け継がれてきたものに違いありません。詳しくは水野信男さんの解説をお楽しみに、ということにして、私たちはこの大博覧会の雰囲気の中で、シェヘラザードの気分で?宮殿の典雅な雰囲気を想像しながら演奏することにしましょう。

アラビアンナイトの音楽と聞いて、すぐに「タラブ」ということばを思い浮かべました。タラブはアラブ芸術音楽の大切な概念のひとつ。もっとも素晴らしい演奏とは、タラブをもたらす演奏のことです。アラブ人に言わせると、このアラピア語を他の言語で置き換えるのは難しく、あえて近いものは「エクスタシー」だといいます。つまり、音楽から得られる恍惚の状態です。歌手はその歌によって、聴衆をタラブへといざないます。10世紀の文学史家イスバハーニーの『歌の書』にもタラブの様子がたくさん出てきますし、20世紀エジプトの不世出の歌手ウンム・クルスームが歌い続けると、聴衆はしだいに酔いしれ、感嘆の声やため息がホールにどよめくのでした。器楽奏者にとっても、もちろんタラブは理想です。私のウードの師でチュニジアの巨匠アリ・スリティも、いつもタラブということばを口にし、自分のコンサートにもタラブという題名を付けていました。
彼はとりわけその素晴らしいタクスィーム(即興演奏)で、聴衆をタラブへと導くことができました。タラブは聴衆と一体となってはじめて得られるもの。妙なるしらべによって、皆さんとタラブを共有できれば幸いです。

公演後にはエリーさんと私たちと、お客様との交流会があります。
そこでもまた楽器の説明をしたり、演奏したりする予定です。
ぜひ、楽しいひとときをご一緒に過ごしましょう。

公演は無料ですが、参加申し込みが必要です。
締め切りは9月9日となっておりますが、すでに定員を超えた応募が来ておりますので、参加は抽選となっています。しかし、このような貴重な演奏を聴くことができる機会はなかなかありませんので、ふるってご応募ください。

山中由里子

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★研究公演「アラビアンナイトのしらべ-アラブの古典楽器を聴く-」
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アラビアンナイトの物語のなかに、しばしば登場するアラブの古典楽器、カーヌーン、ウード、ナーイに、リックやダラブッカなどの打楽器をまじえ、その独奏や合奏をとおして、かつてバグダードの宮廷で、歌舞とともになりひびいた音楽をしのびます。

日 時:2004年9月23日(木・祝)13:30~15:00(13:00 開場)
会 場:国立民族学博物館 講堂出 演:エリー・アシュカル(カーヌーン奏者)
    ル・クラブ・バシュラフ
解 説:水野信男(兵庫教育大学名誉教授)
参加要領:本研究公演は、参加無料です。
往復はがきに住所・氏名(返信用おもてにも)・年齢(任意)・電話番号・参加希望人数(本人を含め4名まで)・「9月23日研究公演」と明記のうえ、9月9日(木)(当日消印有効)までにお申し込みください。
※今回の公演は応募者多数のため、抽選となりますのでご了承ください。

お申し込み・お問い合わせ先:
  〒565-8511 吹田市千里万博公園10-1
  国立民族学博物館 広報企画室企画連携係 TEL:06-6876-2151

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アラビアンナイトカウントダウン33夜ということで、臨時号をお送りします。

「アラビアンナイト大博覧会」のホームページをリニューアルいたしました。
  http://www.minpaku.ac.jp/special/opensesami/index

「みんぱくe-news28号」 http://www.minpaku.ac.jp/museum/enews/028

でも少し紹介していますが、モンキー・パンチ氏とおおすみ正秋監督が手がける3DCGアニメ(約10分)を会場にて上映いたします。詳しい情報は次号以降でお伝えしますので、お楽しみに。