国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

Arabian Nights Highlights!  2004年10月15日刊行
山中由里子
・Contents・
【1】Arabian Nights Highlights!
【2】みんぱくゼミナール「米を食べ魚を食べる」
【3】無料観覧日・休館日・システム停止のお知らせ
【4】公開シンポジウム「現代世界の文化人類学:社会との連携を求めて
【5】公開フォーラム 「世界の博物館2004」
【6】公開研究フォーラム;国際開発援助ワークショップ「デンマーク、スウェーデン、日本の開発援助:開発における社会科学の役割を中心に」
 ☆編集後記

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【1】Arabian Nights Highlights!
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● アラビアンナイト・ハイライト その1

山中由里子

アラビアンナイト大博覧会、もうご覧いただきましたか?まだ?会場には老若男女問わず楽しい展示品が目白押しです。ご年配の方には「懐かしい!」というアラビアンナイトの絵本もあり、お子様には嬉しいカードゲームのコレクションもあり。愛書家にはたまらない珍しい古書の数々、映画愛好家もびっくりアラビアンナイト映画ポスター集、宝塚歌劇のアラビアンナイトもの衣裳、「ひょっこりひょうたん島アラビアンナイトの巻」に登場した人形、モンキーパンチ原作3DCG「ヤング・シェヘラザード」・・・・。あげ始めるときりがありません。
そこで、e-newsでは、「アラビアンナイト・ハイライト」と題して、特別展のみどころをご紹介していきます。今回はアラビアンナイト挿絵の歴史を研究している小林一枝さんにお願いしました。シャガールがアラビアンナイトの中の物語を描いた版画を創作していたことはみなさん、ご存知でしたか?
非常にめずらしい13点揃ったリトグラフの一連が展示されております。
お見逃しなく!

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★絵画としてのアラビアンナイト

小林一枝(早稲田大学国際部講師)

『アラビアン・ナイト』に限らず、挿絵を鑑賞するにあたっては、画家がどの場面を描いたかを確認する楽しみがある。アニメ・フィルムと異なり、画家はどのエピソードを選び、それをどこで絵画化するかという選択を迫られる。
例えば、シャガールのリトグラフ作品の場合、『アラビアン・ナイト』のいったいどの逸話に挿絵を付けたのであろうか?アラジン、アリババ、はたまたシンドバッド?種明かしをすると、彼は、いわゆる波瀾万丈、魔人と格闘、活劇タイプといった代表作ではなく、恋物語の色合いが強い4つのロマンティックな作品を選んでいる。この点、いかにもシャガールらしい。しかし、同じ場面を描いていても、画家それぞれに特徴がある。例えば「黒檀の馬」の飛行画面の場合、デュラックはもっと幻想的でかつ躍動感のある空中の騎馬シーンを描き、カサノヴァ版の挿絵を描いたマックリーは、白と黒のコントラストが醸し出す独特のリリシズムの中に黒檀の馬を描いている。 傑作なのは、『アラビアン・ナイト』の中でも、美男美女対決として知られる「カマル・ウッザマーン王子とブドゥル姫の物語」を描いた作品である。絶世の美男美女は、どのように描かれているのだろう。中世のペ・ヨンジュンか、ディカプリオ似?キムタク風?実際、有名なバートン版の挿絵(19世紀後半)には「ちょんまげを結った暴れん坊将軍風」のカマル王子が描かれていたりする。なぜか?その答えのカギは、展覧会場を巡っていくと自然に見えてくるだろう。会場では、シャガールの13枚目の挿絵(これは印刷された111部のうちでも10部にのみ挿入された)も貴方様を待っている。13枚目の画面は、大団円を示しているのであるが、それは、彼シャガールの生涯の幸せな結末を暗示するモノなのか、それともこの展覧会の結末を示すものなのか。
『アラビアン・ナイト』の不思議は、尽きることがない。

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====アラビアンナイト大博覧会 近日中の会場内イベント====
会場内ではご家族で楽しんでいただける催し物がたくさん!

◆みんぱくミュージアム・パートナーズによる紙芝居
土日祝日の日に3回、読書コーナーにて紙芝居の上演があります。
「アリババ」「アラジン」「シンドバッド」「空飛ぶじゅうたん」など。

◆ユリコ先生のアラビアンナイト教室
本館山中由里子助手が、子どもたちにわかりやすくアラビアンナイトを解説します。大人でも「へぇー、そうだったのか」といったアラビアンナイトの不思議にせまります。紙芝居、お絵かきもするよ。特別展の入館者はどなたでも無料で参加できます。
10月16日、11月21日、12月5日 13:00~14:00 特展2階読書コーナー

◆人形劇「アリババと40人の盗賊」
アラビアンナイト教室でお勉強をしたあとは、人形劇サークル<ぱれっと>による楽しい人形劇を是非ご覧ください。
10月16日、11月21日、12月5日 14:00~14:30 特展2階シアターコーナー

◆落語版アラビアンナイト
桂九雀さんが、アラビアンナイトを落語で演じてくれます。
終了後、ギャラリー対談も予定しています。
10月29日、11月3日、11月27日 14:00~14:30 特展2階シアターコーナー

◆特別講演会「開けゴマ ─ アラビア書道の世界」
本田孝一(アラビア書道家)、ハサン・マスウーディー(イラク出身の書道家)による講演と実演です。
11月14日(日)14:00~16:00 本館第5セミナー室

◆ベリーダンス・パフォーマンス+プチ講習会
10/23(土)、10/30(土)、11/13(土)、11/23(火)
14:30~14:50 パフォーマンス 特展1階
15:10~15:30 プチ講習会 特展2階シアターコーナー
(15:00より、整理券発行。先着20名受付)

◆シアターコーナーでの上映作品(上映時間は下記URLをご覧ください)
・3DCGアニメ「ヤング・シェヘラザード」モンキー・パンチ
・落語「男と仕立屋、ユダヤ人の医者、御用係、キリスト教徒の仲買人の物語」桂九雀
・講談「アリババと40人の盗賊」旭堂南海
  http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/opensesami/theater

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(^^)/~~~ (^_^)/~ みんなきてね~! (^^)/~~~ (^_^)/~

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【2】みんぱくゼミナール「米を食べ魚を食べる―稲作民が築いた西アフリカの文明―」
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西アフリカをつらぬくニジェール川。1500年に渡って数多くの王国が支配したその流域では、米と魚を食べるという日本人と似た生活がいとなまれてきました。かれらの生き方にみせられた一人類学者が、どのようにして考古学発掘に従事するまでになったかをお話しします。

講 師:竹沢尚一郎(民族文化研究部教授)
日 時:10月16日(土)14時開演
場 所:民博 講堂
参加方法:聴講無料。事前のお申し込みは不要です。

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【3】無料観覧日・休館日・システム停止のお知らせ
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  • 11月3日(水・祝)、20日(土)、21日(日)は無料観覧日です。
  • 3日の開館に伴い、4日(木)を休館とさせていただきます。
  • 受変電設備の点検に伴い、11月9日(火)17:30から10日(水)17時までサーバを停止しますので、サイトを閲覧できません。

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【4】公開シンポジウム「現代世界の文化人類学:社会との連携を求めて」
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国際シンポジウム「現代世界における人類学的知識の社会的活用」を10月28日から30日まで開催いたします。10月30日(土)は当館講堂において、「現代世界の文化人類学:社会との連携を求めて」の公開シンポジウムを開催いたします。
入場は無料です。

2004年10月30日(土)13:30~16:30
基調講演:Catherine Bateson(文化関係研究所 所長)
 "An Anthropology for the Future"(同時通訳)
パネリスト:山下晋司、箕浦康子、大森康宏、山本真鳥、桑山敬己、小泉潤二、波平恵美子

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◆関連事業 マーガレット・ミードに関する上映会
  • "Margaret Mead; a Portrait by a Friend"
  • "Bathing babies in three cultures"
  • "Childhood Rivalry in Bali and New Guinea"

期日:10月23日~11月3日(但し10月27日は休館日)
   11:00~16:00(上記作品を繰り返し上映します)
会場:民博 第7セミナー室 ※入場無料

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【5】公開フォーラム「世界の博物館2004」
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民博では、国際協力機構(JICA)大阪国際センターからの委託をうけ、滋賀県立琵琶湖博物館と共同で世界各地の博物館専門官を対象とした「博物館学集中コース」を2004年9月13日(月)~12月3日(金)まで実施していますが、この機会に、これらの国々の博物館事情に触れた公開フォーラムを開催いたします。

期日:2004年11月6日(土)13:30-17:00
会場:大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホール ※入場無料
申込先:「博物館学集中コース」事務局 TEL:06(6878)8250
    先着160名。10/31までに申込みを。

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【6】公開研究フォーラム;国際開発援助ワークショップ「デンマーク、スウェーデン、日本の開発援助:開発における社会科学の役割を中心に」
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デンマークとスウェーデンによるアフリカ地域やアジア地域、中南米地域の国々における開発援助プロジェクトは、資金の点で日本と比べると少ない一方で、援助を受けている地元民からは高い評価を得ています。無償援助に重点をおくデンマークとスウェーデンの開発援助について、さらに有償援助と無償援助を行っている日本の開発援助についてワークショップを開催いたします。使用言語は英語です。大学院生や国際協力機構(JICA)、コンサルタント会社、一般の方々もオブザーバー参加を認め、公開いたします。

日時:2004年11月6日(土)・7日(日)
場所:民博 第4セミナー室
基調報告者:Neil Webster「デンマークの開発援助について」
      Tomas Kjellqvist「スウェーデンの開発援助について」
      佐藤寛「日本の開発援助について」
問い合わせ:岸上伸啓・関雄二 TEL:06-6876-2151(代表)

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☆ 編集後記

台風よ。もうじゅうぶんだろう。
野菜は高くなるし、熊は熟した木の実が食べられず、腹を空かせている。
なによりも、秋晴れのなか民博を訪れたいと思ってくれているお客さんのことをきづかってくれ。お願いだあ!!

野林厚志(編集長)