国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

Arabian Nights Highlights! 2004年11月18日刊行

山中由里子

・Contents・

【1】Arabian Nights Highlights!
【2】みんぱくゼミナール「音とイメージによるアラビアンナイト」
【3】今週末の特展関連イベント
【4】今後の特展関連イベント
【5】新着資料展示「ポリネシア文化の誕生と成熟」
【6】企画展示「みんぱく動物園」
【7】みんぱく映画会「外国人から見た日本人」
【8】みんぱくフォトギャラリー開催中
 ☆編集後記

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【1】Arabian Nights Highlights!
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● アラビアンナイト・ハイライト その4

山中由里子

今度の土日(11/20・21)は「関西文化の日」で民博と、万博公園・大阪日本民芸館も無料なのです。今週末を狙っていらっしゃる多くのお客様に楽しんでいただくために、「アラビアンナイト大博覧会」関連のイベントも特に力が入っています。

旭堂南海さんによる講談「アリババと40人の盗賊」の実演、みんぱくゼミナール「音とイメージによるアラビアンナイト―西洋音楽にみるオリエンタリズム」、みんぱくフォトギャラリー「アラビアンナイトの馬たち」でのギャラリートーク、人形劇「アリババ」、などなど・・・。無料でここまでするかっ!?

今回のアラビアンナイト・ハイライトは、みんぱくゼミナールをプロデュースしてくださり、また自ら演奏をされる小田淳一さんにお願いいたしました。
西洋の音楽家たちが創りあげたアラビアンナイトの音の世界を、解説と実際の演奏で味わっていただきます。

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★「千一夜物語の無限Re-Play」

小田淳一(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教授)

このみんぱくゼミナールでは水野信男先生の講演に加え,リムスキー=コルサコフ作曲《シェヘラザード》からの抜粋,そしてジェーヌ・ヴィユー作曲《15場の影絵劇アラジン》が演奏されます。 ガランによって千一夜物語(以下『夜』と略)が西洋へ紹介されてから,音楽の世界でも『夜』を題材とした曲がたくさん書かれました。ところが19世紀半ばまでは,肝心の音楽そのものが当時のごく普通の音楽と何ら変わるところのない作品がほとんどでした。その点で,リムスキー=コルサコフの《シェヘラザード》は『夜』関連の曲としては最も成功した例の一つであると言えます。その最大の理由は,物語と音楽との形式上の相同性にあると思われます。つまり,狂言回しとも言えるシェヘラザードが魅力的なテーマを与えられて各楽章に登場していますが,この構成は『夜』の「枠物語」形式と合致しているのです。また,物語のイメージを音楽に移す際に,彼は色彩感溢れる管弦楽法を,海や船などの描写,東洋風の旋律などに応用していますが,これは海軍士官として彼が体験した遠洋航海が重要な契機になっているものと思われます。今回は,残念ながら管弦楽による演奏ではなく,作曲者自身の編曲によるピアノ連弾版を中心に演奏します。

しかし,シェヘラザードのテーマだけはやっぱりヴァイオリンでないとサマにならないので芦屋交響楽団のコンサートマスター中島章能さんが甘美な音色を聴かせて下さいます。そして第3楽章は,かのクライスラーが,リムスキー=コルサコフの作品をウィーン風に再解釈した版(ヴァイオリンとピアノによる「アラビアの歌」)を演奏します。さらにまた,演奏を行うだけではなく,主にマルドリュス版『夜』のために描かれたカレやデュラクなどの挿絵から,曲想にふさわしいものを選んでスクリーンに映し出すという趣向を加えています。物語から生まれた音楽と,物語に付けられた挿絵が醸し出す「ハーモニー」にもご期待下さい。

挿絵が音楽と合わなくて興趣をそぐような場合があるかも知れませんが,リムスキー=コルサコフの「ある主題は特定のストーリーに結び付けられたものではなく聴き手の自由な想像に委ねられる」という解説に免じて,今回の《シェヘラザード》の演奏(+挿絵映像)を,再生を続ける『夜』の,新たな多重媒体ヴァージョンとして聴いて(見て)頂ければと思います。

さて,もう一つの影絵劇《アラジン》は,マルドリュス版『夜』が一世を風靡した今からちょうど100年前にその影響下で書かれた作品です。作曲者のジェーヌ・ヴィユーは20世紀初頭に活躍した女流作曲家ですが,今ではほとんど忘れ去られているようです。しかし,多くのジャンルで100曲余の作品を残す一方で,パリ国立高等音楽院で使われたソルフェージュ教本を書いたと思えば,ペンネームとしてわざと英語風に綴った「ジェーヌ」を用いたり,時には「ピエール・ヴァレット」という男性の偽名を使って作品を書いたり,さらには音楽出版社を設立して自作品の多くを挿絵付き豪華本として出版するなど中々の才女ぶりで,当時のパリ楽壇ではかなり知られた存在だったと想像できます。

この曲は,題材こそアラジンですが,作詞者&作画者であるメティヴェの芸術観が込められた一種のパロディー作品であり,詩と音楽,そして影絵を組み合わせた,ベルエポックの芸術風土を髣髴とさせる佳品と言えるでしょう。
この軽妙な作品から,その背後にある一つの時代の雰囲気とでもいうものを伝えることが出来ればと思います。なお,今回の演奏が恐らく日本初演であると思われます。

このみんぱくゼミナールでは,クライスラーによるアンコールピースの再生産にまで分岐する大きな幹の《シェヘラザード》と,一見軽い作品のように見えながらも,精巧な造りの小さな枝である《アラジン》の対照を通して,『夜』が西洋音楽にもたらしたオリエンタリズムのヴァラエティーの広さを,音楽に加えて,挿絵や影絵といったイメージと合わせて感じ取って頂けることと思います。

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【2】みんぱくゼミナール「音とイメージによるアラビアンナイト―西洋音楽にみるオリエンタリズム―」
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http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/seminar/319

プログラム
ニコライ・リムスキー=コルサコフ
交響組曲《シェヘラザード》Op.35
第1楽章(ピアノ連弾版)、第3楽章(クライスラー版)、第4楽章(ピアノ連弾版)

ピアノ:米山知子,小田淳一
ヴァイオリン:中島章能

ジェーヌ・ヴィユー/リュシアン・メティヴェ(作詞・作画)
《15場の影絵劇アラジン》

ソプラノ:小泉惠子,ピアノ:小田淳一
打楽器群:田中孝夫,小泉英恵,小泉英一郎
ナレーション:田中尚子

講師:水野信男(兵庫教育大学名誉教授)
   小田淳一(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教授)
会場:民博 講堂(先着450名)聴講無料。事前のお申し込みは不要です。
日時:11月20日(土)14:00~15:30(13:30開場)

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【3】今週末の特展関連イベント
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◆ギャラリートーク「アラビアンナイトのしらべ(仮題)」

11/19(金)13:30~14:00 特展1階アラビアンナイトのしらべコーナーにて
講師:水野信男(兵庫教育大学名誉教授)

◆講談「アリババと40人の盗賊」

11/20(土)13:00~13:30 特展2階シアターコーナーにて
シアターコーナーにて上映されている講談を旭堂南海さんが実際に演じてくださいます。

◆ギャラリートーク「アラビアンナイトの馬たち」

11/21(日)11:00~ / 15:00~ 本館1階エントランスホールにて
講師:佐藤美子(写真家)

◆ユリコ先生のアラビアンナイト教室

11/21(日)13:00~14:00 特展2階読書コーナーにて 講師:山中由里子(民族文化研究部助手)
子どもたちにわかりやすくアラビアンナイトを解説します。大人でも「へぇーそうだったのか」といったアラビアンナイトの不思議にせまります。

◆人形劇「アリババと40人の盗賊」

11/21(日)14:00~14:30 特展2階シアターコーナーにて
アラビアンナイト教室でお勉強をしたあとは、人形劇サークル<ぱれっと>による楽しい人形劇を是非ご覧ください。

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【4】今後の特展関連イベント
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http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/opensesami/event
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/opensesami/event_info
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/opensesami/theater

◆ベリーダンス・パフォーマンス+プチ講習会

11/23(祝)
14:30~14:50 パフォーマンス 特展1階にて
15:10~15:30 プチ講習会 特展2階シアターコーナーにて
 (15:00より、整理券発行。先着20名受付)

◆落語版アラビアンナイト

11/27(土)14:00~14:30 特展2階シアターコーナーにて
桂九雀さんが、アラビアンナイトを落語で演じてくれます。
終了後、ギャラリー対談も予定しています。

◆影絵劇「アラジン」

11/28(日)14:00~14:30 特展会場内にて
出演:田所都(ソプラノ)/安田純子(伴奏)

◆ギャラリートーク「アラビアンナイトの楽器はどんな音がしたの?…ウードの響きを聴いてみましょう」

11/28(日)15:00~15:30 特展1階アラビアンナイトのしらべコーナー
講師:水野信男(兵庫教育大学名誉教授)

◆ワークショップ

11/28(日)15:30~16:30 特展1階スーク空間(大階段前)にて
出演:佐藤圭一
ウードは中東の伝統的で代表的な弦楽器です。アラビアンナイトの物語にもしばしば登場します。佐藤さんにいろいろな曲を演奏してもらい、フロアのみなさんにも、手拍子で参加していただきます。中東の音楽のリズムには、5拍子や7拍子など、おもしろい複合拍子がたくさんあります。
さーて、サマーイの10拍子はうまくとれるかな?!

◆ユリコ先生のアラビアンナイト教室

12/5(日)13:00~14:00 特展2階読書コーナーにて
講師:山中由里子(民族文化研究部助手) 子どもたちにわかりやすくアラビアンナイトを解説します。大人でも「へぇーそうだったのか」といったアラビアンナイトの不思議にせまります。

◆人形劇「アリババと40人の盗賊」

12/5(日)14:00~14:30 特展2階シアターコーナー
人形劇サークル<ぱれっと>による楽しい人形劇を是非ご覧ください。

◆シアターコーナーでの上映作品(上映時間は下記URLをご覧ください)

  • 3DCGアニメ「ヤング・シェヘラザード」モンキー・パンチ原作
  • 落語「男と仕立屋、ユダヤ人の医者、御用係、キリスト教徒の仲買人の物語」 桂九雀
  • 講談「アリババと40人の盗賊」旭堂南海作

◆みんぱくミュージアムパートナーズ企画イベント

☆ワゴン(物語に出てくるものを体感するハンズオン展示)
 金曜日を中心に週に2、3回・1階「アリババの世界」そばにて

☆ぬりえ
 毎日・2階読書コーナーにて

☆アラビア語を書いてみよう
 毎日・2階読書コーナーにて

☆試着コーナー
 毎日・1階試着コーナーにて

☆紙芝居
 土日祝日・11:40~/13:40~/14:40~・2階読書コーナーにて
 (当日、変更がある場合があります)

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【5】新着資料展示「ポリネシア文化の誕生と成熟」
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http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/thematic/polynesia/index

ポリネシアで船に乗ると周囲をぐるっと水平線に囲まれ、「地球は本当に丸いんだ…」と納得できます。そんな広大な海洋地域に点在する島じまに住む人たちは、どこからきて、どんな文化を作りあげてきたのでしょうか?
ポリネシア文化の揺籃期から成熟期までを、新着資料(葬送コスチューム、入れ墨用具、ラピタ土器複製など)を使って展示します。

開催期間:2004年11月11日(木)~2005年5月31日(火)
開催場所:常設展示場内 ※常設展の観覧料が必要です。

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【6】企画展示「みんぱく動物園」
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http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/thematic/zoo/index

好評につき会期延長いたしました「みんぱく動物園」も11月23日(火)までとなりました。世界各地のさまざまな動物造形を楽しんでいただけますので、お見逃し無く。

開催期間:2004年7月15日(木)~11月23日(火)
開催場所:常設展示場内 ※常設展の観覧料が必要です。

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【7】みんぱく映画会「外国人から見た日本人 ― 外国人による日本文化の映像―」
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http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/fs/movies0411

異なる文化の背景を持つ映像作家が日本をどう理解し、何を求めているのか。
日本人の姿を映像を通して再発見し、国際社会の中でよりよきコミュニケーションを確立することをめざします。

上映作品:「BABY BLUES BABY DOLLS」(製作:ジョン・フリーマン)
     「心をはぐくむ」(製作:レーナード・カマリング)
解説:大森康宏(民族文化研究部教授)
日時:2004年11月27日(土)13:30~16:30(13:00開場)
会場:講堂(先着450名)※申込み不要・参加無料

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【8】みんぱくフォトギャラリー開催中
     「アラビアンナイトの馬たち―王家が育てる純血アラブ馬―」
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http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/opensesami/photo

マスカット近郊とサラーラにある王宮の馬舎内で撮影された写真を中心に展示しています。勇猛なアラブ馬が大地を駆け抜ける様子は、我々が日常、目にするサラブレッドの競馬とはまた違った光景を与えてくれます。

写真撮影:佐藤美子(SATO Yoshiko)
開催期間:12月7日(火)まで
開催場所:常設展示場1階エントランスホール ※観覧料無料
これらの写真を撮られた佐藤美子さんが、11/21(日)11:00からと15:00から、本館1階エントランスホールにてギャラリートークをしてくださいます。

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☆編集後記

14日にみんぱくミュージアムパートナーズの皆さんと三田にある、兵庫県立人と自然の博物館で行なわれた「ひとはくフェスティバル」に参加してきました。
民博を飛び出したアラビアンナイト大博覧会は三田でも存在感ばっちり。
パートナーズとのコラボレーションが面白くなってきました。

野林厚志(編集長)