国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

狩猟用弩弓、弩弓用矢筒、弩弓用矢 2006年4月14日刊行

野林厚志

今から7、8年ほど前に、中国の雲南省の怒江の山岳地域に調査に出かけたことがある。

少数民族のリス族やヌー族の人たちが住んでいる地域だ。1年目は、民博の標本資料の収集の手伝いをしながら、リス族やヌー族の人たちの生活文化に関わる民族資料を収集した。そのときに、これは面白いと思った資料が彼らの用いる弩弓であった。いわゆるボウガンとよばれるもので、素材は木材を使っており、引き金の部分にだけ骨のようなものでできた台がつくりこまれている。もともと、狩猟活動に関心があったので、翌年に弩弓の機能と形態とを調べようとしばらく山の中の村に滞在し、調査を行なった。

調査で調べたことの一つに、距離の遠近と命中率との関係があった。アーチェリーの競技に用いる的をもちこみ、村の人に集まって弓うち大会を行なった。弓をもった成人の男性たちが集まるなかで、10歳くらいの男の子が数人まじっている。手には、大人のものよりも小さな弩弓。大人の男性に、「子どもも遊びで弓を打つんだね」と話すと、「いや、彼らはちゃんと鳥をねらえるよ」という答え。確かに大人よりも命中率の高い子どももいたりして、小さいから遊び半分にやっていると思ってしまったことを少し反省した。

大人の用いる弩弓は引きが強く、子どもがそれを引くのは容易なことではない。そこで、男の子の父親もしくは父方のおじさんが、子どものために一回り、小さい弓を作ってくれるのである。子どもはそれを使って、鳥をうつ練習を始めるという。成長するにつれて、だんだん腕力も強くなり、大人の弓が引けるようになると、一人前の狩人として認められていくのであろう。特別展「みんぱくキッズワールド」の展示資料ひとつにまつわる子どもと大人の物語である。

野林厚志(文化資源研究センター)

◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H0208008 / 標本名:狩猟用弩
【下】標本番号:H0207891-897 / 標本名:弩用矢筒(蓋付き)・弩用矢

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◆関連ページ
特別展「みんぱくキッズワールド:こどもとおとなをつなぐもの」(2006年3月16日~5月30日)