国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

養蜂用巣箱(日本、スーダン、デンマーク) 2006年7月13日刊行

加藤謙一

先日、今年は三重県の山間部でスズメバチが大量発生のおそれありという記事を目にした。5年ほどまえに大阪北部で集落のお堂を調査している際に大きなスズメバチに刺されて以来ハチを見ただけでうろたえてしまう私にとって、これは三重県だけの話なのかと悪い想像をしてしまうのである。

だが単純に「ハチはキライ!」とばかりはいっていられない。なにせかれこれ1万年にわたり人類はミツバチからハチミツやミツロウという恩恵をさずかり、くらしの中に取り入れてきたのだから。そこには当然、地域ごとに養蜂に関わる豊かな文化と技術が培われてきた(注1)。みんぱくにも世界各地の養蜂にまつわる道具が所蔵されている。今回はその中から日本、スーダン、デンマークの巣箱をご紹介したい。

このうち日本とスーダンのものは、直径30センチくらいの木の幹を、長さ80センチから1メートルほどに切ったもので、中をくりぬき空洞にし、側面に小さな穴が開けられている。ハチたちはこの穴を出入り口にして中に営巣するのである。日本のものは伝統的に養蜂のさかんな長崎県対馬で収集されたもので、巣箱は縦に置かれて使用される。スーダンのものはこれとは対照的に、木の太い枝にひもで縛るなどして横向きに設置される。巣箱の設置方法の分布には地域的な特徴が確認されている。横置き型はアフリカ大陸とヨーロッパのアルプス山脈周辺から東にかけてみられ、縦置き型はアジアからヨーロッパに多く分布しているといわれている。一方、デンマークのものは一般的にスケップと呼ばれるタイプの巣箱で、ワラや木の枝で編んだカゴを逆さまに伏せて使われる。

これらの資料は、7月13日に開幕した企画展「みんぱく昆虫館」でご覧いただくことができる。会場では人類と昆虫に関わる多様な文化を民博の収蔵資料を通じてご紹介する。今回取り上げた巣箱は、同じ用途でも地域間での比較を通して、その多様性と共通性を確認できる好例であり、地道な収集活動に裏打ちされたみんぱくならではのお宝といえるだろう。

 (注1)福島県の例は2006年『月刊みんぱく』6月号を参照されたい。

加藤謙一(機関研究員)

◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H0024620 / 標本名:養蜂用巣箱(日本)
【中】標本番号:H0114545 / 標本名:養蜂用巣箱(スーダン)
【下】標本番号:H0118028 / 標本名:養蜂用巣箱(デンマーク)

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◆関連ページ
企画展「みんぱく昆虫館」(2006年7月13日~9月5日)
月刊みんぱく2006年6月号 生きもの博物誌「ヤマバチが「来る」季節」