国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

ガウ 2007年7月19日刊行

須藤健一

ミクロネシア・ヤップ島のウミギク(二枚貝)の赤い部分を加工した貝貨。ヤップでは、この他に、石貨、真珠母貝の貝貨、ジュゴンの「牙貨」やハイビスカスの繊維など多様な「伝統貨幣」が使われている。その中でもガウの価値が最も高い。このガウはパラオに航海して石貨をつくった伝説上の英雄、「アナグマ」の名前がついている。

全長1.5メートルのガウは、直径2メートルの大石貨1個に小石貨3個を加えた計4個の石貨と同等の価値がある。長老は、「ガウさえあれば、家でも、カヌーでも、人間でも買える。」という。古くは、村と村の戦争で敗けた村が勝者の村に償い金として、また、重罪を犯したものが「命乞い」のために首長に賠償金として支払った。

現在、伝統貨幣では商品を買えないが、銀行はガウを担保に数千ドルのローンを認めている。借りた人は、かならずガウを取り返す、つまり借金を返済するからである。この銀行の粋な計らいは、これからも続けてほしいものである。

須藤健一(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0010216 / 標本名:ガウ

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