国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

World Watching from Bangkok 2007年12月19日刊行

朝倉敏夫

● バンコクのコリアタウン

11月29日から12月3日にかけて、初めてバンコクに行った。味の素食の文化センターによる食の文化フォーラムと「タイと日本の食文化比較」という公開シンポジウムに参加した。活発な討論があり、頭の中も知的好奇心でいっぱいになったが、懇親会でのタイ料理だけでなく、屋台でフォーラムのテーマ「米と魚」にあわせて米粉と魚団子の入ったスープを食べるなど、お腹の方も満喫させてもらった。

今回の日程は2泊4日であったが、私は海外コリアンの研究をしているので、1日延泊し、バンコクのコリアン事情を探ることにした。フォーラムのメンバーであり、『タイ様式』の著者である前川健一さんから、外国人観光客が多いスクンビット通りに韓国料理店が多くあることを聞き、さっそく向かってみた。

それはアソーク駅の近くにあった。スクンビットプラザという5階建てのビルに「泰国韓人商街」とハングルで書かれた看板が掲げられていた。このビルには、韓国料理店だけでなく、韓国食材店、本屋、ビリヤート、カラオケ、ダンス教室、美容院、旅行社、韓医院など、およそ40の店舗が入っている。本屋には、無料で配布される『僑民雑誌』254号が置かれていた。タイでの生活情報や電話番号簿が掲載されたこの雑誌は、創刊が1998年1月15日で、隔週火曜日に刊行されている。3階にある教会に行ってみると、ドアは閉まっており、引っ越し先が書かれた紙が貼られていた。

このビルの店舗構成から見えたことが一つあった。それは、1階は韓国人だけでなく、日本人客を目当てにしていることだ。1階の韓国料理店は焼肉を主体としており、日本語で書かれたメニューを店頭に出しており、ドアには「タイ国日本人会優待」のステッカーが貼られている。一方、2階以上にある料理店は、カムヂャタン、ポッサム、焼酎房、韓国式の中華料理店と、韓国人向けの店ばかりである。1階は一見の客、2階以上がなじみの客ということだ。

バンコクには大きなチャイナタウンがあり、日本料理店は600店を数えるという。それらと比べると、コリアンの進出の規模は小さく、歴史も浅い。しかし、このビルの近くにあるタイムズ・スクエアにも、不動産、情報センター、正統日式(韓国式の日本料理)、焼肉店などが入り、10階には「韓人会」の事務所があり、コリアタウンが形成されはじめていた。今回は一日だけの調査だったが、今後もバンコクのコリアンに注目したくなった。

朝倉敏夫(民族文化研究部)

◆参考写真(2007年11月 朝倉敏夫撮影)

写真 泰国韓人商街ビル (2007年11月)
写真1
写真 そのビルの1階にある焼肉店 (2007年11月)
写真2

◆参考サイト
タイ概要(日本外務省)