国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

飾り灯篭(ウサギ)  2008年1月16日刊行
塚田誠之

広西壮族自治区・靖西県はチワン(壮)族が住民の99パーセントを占める。中秋節(旧暦8月15日)になると、県城(県庁所在地)では、夜に子供たちがウサギやアヒル・キジなどの動物の形をした灯篭にロウソクを立てて点火して曳く。灯篭は竹ひごで枠組みを作り紙を貼ったものである。中国では、月の中には嫦娥(こうが)という仙女がウサギを連れていて、ウサギは仙薬を搗いているといわれる。嫦娥は、昔、太陽が10もあってこの世が炎熱地獄だったときに9個を射落とした弓の名手、羿(げい)の妻で仙薬を盗んで月へ逃げた。のち人々は中秋節に彼女を偲んで月を祭るようになったという。康煕『上林県志』に壮族の先民が月占いをすると記載されているが、中秋賞月の方式は漢族から受容した。灯篭祭りも光緒『貴県志』に記事があり、漢族から受容したと思われる。だが、今日ではとくに靖西県の壮族のそれが有名で、動物の形をした灯篭は他所には見られない。漢族に由来する故事、習俗を受容しながら自文化を形成してきた壮族の特徴がそこに見出される。

塚田誠之(先端人類科学研究部)

◆今月の「オタカラ」
【1】標本番号:H0215566 / 標本名:飾り灯篭(ウサギ)
【2】標本番号:H0215567 / 標本名:飾り灯篭(ウサギ)
【3】標本番号:H0215579 / 標本名:飾り灯篭(ウサギ)
【4】標本番号:H0215578 / 標本名:飾り灯篭(ウサギ)
【5】標本番号:H0216334 / 標本名:飾り灯篭(ウサギ)

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※開館30周年記念特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」にて公開予定

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