国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

開館30周年記念特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」 2008年3月11日刊行

塚田誠之

中国は多民族国家である。55の少数民族は、人口こそ13億人のうち8パーセントに過ぎないが、悠久の歴史のなかで文化をはぐくみ、民族の知恵を生み出してきた。また、少数民族は、中国文明の周縁地域にあって漢文化を取捨選択しながら受容し、文化形成をおこなってきた。本展示では、西南中国の少数民族に焦点を当ててその文化を紹介する。展示場一階では、1618万と少数民族のうち最大の人口をもつチワン族を取り上げ、その高床式住居の居住空間を再現し、日常の暮らしや年中行事、あやつり人形劇、定期市、国境などの生活世界を紹介する。
高床式住居は、一層が牛・ブタ・ニワトリなどの家畜を飼養し農具を置く空間、二層が人間の居住空間になっている。環境にやさしい資源循環型の暮らしである。前門と祭壇を結ぶ中心線の重視、漢字使用や対聯(トイリエン)・門神、家具などに漢族の影響がみられる。展示場のそれは広西壮族自治区西部の靖西県の村に実在する農家(築18年)をモデルとしている家の中に入ってその日常の生活を実感していただきたい。二階ではミャオ族・イ族・ペー族・ナシ族などの民族の特徴ある洗練された工芸品を、「装う」「創る」「楽しむ」の3つのコーナーに分けて紹介する。
「装う」では、さまざまな民族の服飾を紹介する。服飾は性別・世代にも目配りしている。豪華な銀製装身具と華麗な刺繍のミャオ族の服飾、短めのスカートと足を保護する脚絆(きゃはん)の山岳部の焼畑耕作民の服飾など、そこから諸民族の個性、美意識の結晶を読み取ることが出来る。「創る」では銀製品、漆器、織物、刺繍、玩具、護符などから優れた技術と芸術性を紹介する。銀細工の工房を再現し、銀製装身具がどのように作られるのか紹介する。
「楽しむ」では、タイ族のフルス(ひょうたん笛)、ミャオ族の蘆笙(ろしょう)・木鼓、銅鼓などの特徴ある楽器、ナシ族の宗教職能者(トンパ)が描く象形文字、トンパ文字などの文字を紹介する。これら西南中国少数民族の暮らしと工芸の展示を通じてそのゆたかで多彩な文化にふれていただきたい。

塚田誠之(先端人類科学研究部)

◆関連ウェブサイト
特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」

◆参考写真

写真:高床式住居
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チワン族に伝統的な建築様式で広西の北部・西部に見られる。

写真:チワン族の歌掛け
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旧暦の三月に行われる。男女が配偶者を探す場から、今は娯楽に。

写真:ミャオ族の服飾
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銀は貴重な財産で、魔よけの力をもつと考えられている。

写真:ぺー族の木彫
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洗練された、見事な木の匠のワザが光る。