国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

インド西部の刺繍布  2008年9月9日刊行
上羽陽子

10月9日から始まる企画展「インド刺繍布のきらめき―バシン・コレクションに見る手仕事の世界」では、100点ほどの刺繍布が展示されている。これらはインドで手工芸開発にとりくんできたB.B.バシン氏の所蔵品の中から、昨年収集されたものである。刺繍布の多くはグジャラート州カッチ地方やサウラーシュトラ地方といったインド西部で女性たちによってつくられたものである。これらの刺繍布を近くでみると、気の遠くなるような手の動きの蓄積に圧倒される。この地方の刺繍布の特徴は、1枚の中にさまざまな技法による針運びを見ることができることである。そして子安貝や金糸、銀糸、ガラスミラーや金属ビーズといった多種類の素材を縫い付けていることである。

例えば、現地でコトリと呼ばれる婚礼時に花嫁側が花婿側に持参する上衣などを入れる持参財袋(H0238063)。この袋には、ミラー刺繍やアップリケ、さらにはビーズワークや余った小さな布切れを再利用した房飾りなど多様な技法をみることができる。また、現地でガネーシャ・スターパナと呼ばれる壁飾り(H0238307)には、インドの象の頭を持つ神様を中心にクジャクや親子の牛、撹拌(カクハン)して発酵乳を作る女性たちといったモチーフが伸びやかに描かれており、女性たちの豊かな表現力を感じることができる。収集された刺繍布は約360点。今回残念ながら展示されないものの中にも数多くのオタカラ級の刺繍布がある。

上羽陽子(文化資源研究センター)

◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H0238063 / 標本名:持参財袋
【下】標本番号:H0238307 / 標本名:壁飾り

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◆関連ページ
企画展「インド刺繍布のきらめき―バシン・コレクションに見る手仕事の世界」