国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

船印を記した船の模型(千島アイヌ)  2009年2月18日刊行
佐々木利和

民博で第一等のアイヌのおたからは、と問われれば一群の「千島アイヌ資料」を挙げることになろう。これらは、今日に残る千島アイヌ唯一の物質文化群である。明治32年(1899)鳥居龍蔵氏により色丹(しこたん)島で収集された。写真はその資料群のひとつで、千島アイヌの船印を記した船の模型。渦にシャチの船印がポロモシリ島のアイヌのもの、ラショワ島アイヌの船印は眼の文様となっている。これは一枚の船形の表裏に描かれている。千島アイヌは明治8年(1875)日露間で締結された「千島樺太交換条約」の結果、日本国籍に編入されたが、北千島という辺境においてはロシアに利敵行為を行うのではないかとの疑心から、およそ千キロ離れた色丹島に強制移住された。今日では千島アイヌの文化継承者は存在しない。なお、この資料は現在展示していない。

佐々木利和(先端人類科学研究部)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:K2338 / 標本名:船印を記した船の模型(千島アイヌ)

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