国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

オタカラ"発見"  2009年4月15日刊行
藤井龍彦

今回の特別展「千家十職×みんぱく」は、いろいろな意味でこれまでのみんぱくの枠を飛び出した展覧会であると思う。その中のひとつとして、「外部の目からモノを見る」ということがある。今回の展示に際し、十職の方々の目で民博に収蔵されている膨大な標本資料の中から展示する資料を選んでいただいた。それらのうちのいくつかの解説を実行委員長の八杉さんから依頼されたが、中に私の守備範囲ではない南米アマゾン地域のものが数点あったので、民博の図書室で何冊かのアマゾンに関する本を借り出して調べてみた。その中の一冊「ARTS OF THE AMAZON」のページをめくっていた時、一瞬わが目を疑った。なぜなら目の前にある民博の資料と瓜二つのものの写真があったからである。細く撚った植物の繊維で丁寧に作られた棹型の「貴重品入れ」とされるもので、良くみると、胴部の文様は本の写真のものより民博の標本の方が丁寧に作られているようである。この本に掲載されているものに匹敵するこの作品は、今回の特別展を機に、工芸家である十職さんの目により暗い収蔵庫から日の目を見たものであり、民博の「オタカラ」のひとつを発見したと言っていいであろう。

藤井龍彦(民博名誉教授)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0110738 / 標本名:貴重品入れ篭(ふた付)

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※特別展「千家十職×みんぱく:茶の湯のものづくりと世界のわざ」にて公開中

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特別展「千家十職×みんぱく:茶の湯のものづくりと世界のわざ」