国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

World Watching from Taipei  2009年7月15日刊行
野林厚志

● 百年来的凝視

さる6月9日、台湾の台北にある順益台湾原住民博物館(以下、順益博物館)において、特別展示会「百年来的凝視」(「百年の時をこえて」)が無事開幕した。この展示会は順益博物館にとって、開館十五周年をかざる一大イベントであり、民博にとっては、本格的に海外で行った国際連携展示会のはじめてのケースといってよいかもしれない。

順益博物館は、先住民である台湾原住民の文化や社会の様子を、展示や社会連携活動を通して伝えていくことを目的として、台湾の自動車関連企業のメセナ活動によって1996年に設立された。常設展示だけでなく、企画展示会やワークショップを重ねるなど、来館者重視の姿勢を一貫して取り続けてきた。また、原住民学生への奨学金の支給、研究機関や大学への研究費の寄付、原住民関連出版物の発行など、原住民文化の振興や研究にあたえた影響や貢献は大きい。

順益博物館と民博とは学術協定をむすびながら、この展示会の準備を2年前から行ってきた。民博には約5,100点の台湾原住民族関連の資料があるが、どのような切り口でどれだけの資料を選び、展示するかにかなり苦労した。館内外の多くのかたがたにお手伝いいただき、果たして193点の資料が飛行機に乗って、台湾の土をふたたび踏んだのであった。中には、日本の重要有形民俗文化財に指定されている資料や、サオ族が原住民族の認定をうけるよりどころとなった信仰にまつわる先祖伝来の古い衣服が含まれていて、地味なテーマではあるが、現地での関心も上々のようである。

とはいえ、地理的にも感覚的にも近いと思っていた台湾であるが、やはり異文化のなかで展示会を作ることは想像以上に大変であった。「えー、うそやろっ!!(野林)」「いや、ほんとです(先方の担当者)」を繰り返しながら、大阪と台北の間を往復していたような気がする。そんな展示会開催までの裏話(?!)を8月9日のウィークエンドサロン「百年来的凝視」で皆さんと楽しみたいと思っています。

野林厚志(文化資源研究センター)

◆関連ウェブサイト
順益台湾原住民博物館
外務省ホームページ