国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

World Watching from Fiji  2009年9月8日刊行
丹羽典生

● ハイビスカス・フェスティバルと世界最高齢の大統領の引退

2009年8月23日、フィジーで最大規模の祭り「ハイビスカス・フェスティバル」がはじまった。そのひと月前には、フィジー諸島共和国の第三代大統領ラトゥ・チョセファ・イロイロヴァトゥ・ウルイヴンダ(通称ラトゥ・チョセファあるいはラトゥ・イロイロ)が引退を表明していたのだが、祭り準備の喧噪にかき消された感がある。ラトゥ・イロイロはすでに88歳という高齢に達しており、パーキンソン病疾病の噂もあるほど身体が衰えていたため、引退はすみやかに承認された。

ラトゥ・イロイロは、2000年、南太平洋を代表する政治家ラトゥ・マラの後継者として大統領となり、たび重なる政治的混乱に疲弊し、いまだ立ち直りの気配も見せていない国の舵取りを担うという大役を果たしてきた。合法的な手順を経て任命された大統領でもあるにかかわらず、彼にかけられるねぎらいの声はあまり聞こえてこない。2006月12月に起きたフィジー史上4度目のクーデタを是認して以降、クーデター実行者の傀儡(かいらい)のごとく振る舞い、フィジーで暮らす多くの人の期待を裏切った。このことに対する暗黙の批判が、大きく関係するようだ。ともあれ、彼の行為の是非は、最終的には歴史が判断するであろう。祭りが終わり、1970年代から政治家として国政に関わってきた人物が政治の表舞台を去る今、今後いかなる政治的秩序が形成されることになるのか、多くの人が固唾(かたず)をのんで見守っている。

丹羽典生(研究戦略センター)

◆関連ウェブサイト
Fiji Government
Hibiscus Fiji
外務省ホームページ