国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

World Watching from Shanghai 2010年3月17日刊行

中牧弘允

● 上海万博に何を見ようとするか

上海万博が5月1日に開幕する。アジアでおこなわれる大阪万博以来の大型万博(一般博)である。期間は10月31日までの半年間。予想入場者数は過去最高を記録した大阪万博の6400万人を越える7000万人である。

日本が東京オリンピックと大阪万博で経済発展にはずみをつけたように、中国も北京オリンピックと上海万博を梃子(てこ)に成長路線をひた走りに走っている。昨年末に予備調査で訪れた上海は熱気と活気であふれかえっていた。開通したばかりの高速道路からは建設途上の高速道路がみえたし、道路は地下鉄の工事であちこち掘り起こされていた。会場も突貫工事の真最中であった。「人」の漢字を模したマスコットの海宝(ハイバオ。四海の宝)はいたるところで歓迎ムードを煽っていたが、あと何日というカウントダウンの掲示板がそれに追い討ちをかけていた。

上海万博のテーマは「より良い都市、より良い生活(Better City, Better Life)」である。各国のパビリオンはそのテーマに即した展示に取組んでいる。日本館では「心の和、技の和」をテーマに日中の文化・技術交流やアニメやロボットなどの現代文化・先端技術が展示される。その一方、都市における優れた取組みを展示するベストシティ実践区が会場の一角にもうけられ、10あまりのバーチャル・エコロジー・タウンの建造物や、30あまりの都市の実践例が紹介される。日本からは唯一大阪が選ばれ、「環境先進都市・水都大阪の挑戦」のテーマで、その取組みをアピールする。

わたしの関心のひとつは、上海万博が中国人民にどのような影響を与えるかを見きわめることにある。なにせ7000万人のうち外国人はたった300万人と想定されているだけだ。万博が終わったら、世界に名を馳せた上海が国内諸都市のモデルとなって、全土に都市化が爆発的に進行するのではないか。農村の中国人はますます都市にあこがれ、都会の中国人もより良い生活を夢見て必死に働くことだろう。日本の技術や文化、あるいは大阪の実践は中国人に何を残すのだろうか。

万博のエネルギーがいかなるものか、老躯には少々きついかもしれないが、楽しみでもある。

中牧弘允(民族文化研究部教授)

◆関連ウェブサイト
中国2010年上海万博
外務省ホームページ