国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

女性用ウイピール  2010年8月20日刊行
日高真吾

1995年1月17日5時46分頃に淡路島で発生した兵庫県南部地震は、日本で初めての近代的な大都市における直下型地震であり、マグニチュード(M)7.3という大きな破壊力をもって、未曾有の被害をもたらした。この地震で吹田市にある国立民族学博物館も被災、2階の展示場のスプリンクラーの誤作動によって約4分の間に10tの水が流出し、1階の準備室で保管していた写真の女性用ウイピールをはじめとする124点の資料が冠水し、水染みが生じる被害を受けた。

女性用ウイピールは、織り方、文様、彩りが村ごとに決まっているマヤ女性の最も基本的な貫頭衣型の衣服である。当時は特別展への出展準備がおこなわれていた。被災後、紫外線ライトで蛍光色を発する水染みの性質を利用した紫外線調査を、資料1点ごとに実施し、純水と界面活性剤を組み合わせた洗浄剤を用いて洗浄作業をおこなった。そして、この事例は、冠水した衣料資料の応急処置の技術開発へとつながっていった。

今回、企画展「歴史と文化を救う-阪神淡路大震災からはじまった被災文化財の支援」に展示している本資料は、さまざまな被害をもたらす災害から得られた知見や技術が、次の災害への備えとなることを伝えてくれている。

日高真吾(文化資源研究センター准教授)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0152180 / 標本名:女性用ウイピール

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