国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

ココナッツ削り具 2011年1月21日刊行

岩谷洋史

みんぱくでは今年も毎年恒例となった年末年始展示イベントが開催されている。今年は、「卯」の年にちなんで、ウサギがテーマである。会期は、昨年12月16日(木)から今年2月1日(火)までであり、ウサギに関わる各地の標本資料を展示している。このイベントは、普段、展示活動に関わることが少ない館内の教職員を対象にした研修活動も兼ねており、展示の企画立案から演示までの研修を受講することで、日常業務の役割と位置づけについての理解を深めてもらっている。

最近では、ウサギというと、まずペット、もしくは何かのキャラクターとして思い浮かべるかもしれないが、日本国内だけでなく、世界に目を向けてみると、生活のなかで食べ物となったり、あるいは、神話や民話のなかに登場する生き物といったように、文化的な意味付けがなされたりもする。今回の年末年始展示イベントでは、そのようなウサギを、人間とのさまざまな関わりが見られるような形で紹介しており、そのなかから「ココナッツ削り具」を紹介しよう。

ココナッツ、とりわけココナッツの乳白色の果肉から得られるココナッツミルクはタイ料理にはかかすことができない。その果肉を削りだす道具がこの「ココナッツ削り具」である。タイ語で、「クラターイ・クート・マプラーオ」という。この削り具の上に腰掛け、先端のギザギザになった金属製の歯でココナッツの果肉を削っていく。

ところで、この「クラターイ・クート・マプラーオ」という名称は、ココナッツ削り具全般のことをさしているが、「クラターイ」が「ウサギ」、「クート」が「削り取る」、「マプラーオ」が「ココナッツ」を意味し、実は、直訳すると、「ココナッツを削るウサギ」という意味になる。動物名が、道具名に転用されるということはしばしばあることだが、おそらくココナッツ削り具の形状がウサギに似ていることからこのような名称になったと思われる。とりわけこの標本資料の興味深いところは、ウサギの形が彫刻されており、実際に名称が実物の形で具現化されていることである。

タイでも十二支に相当するものがあり、卯年は「ピー・トォ」という。ウサギは身近な動物であり、そうした身近な動物が生活用具のなかにあらわれているのである。

岩谷洋史(文化資源研究センター機関研究員)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0169586 / 標本名:ココナッツ削り具

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◆関連ページ
年末年始展示イベント「うさぎ」(2010年12月16日(木)~2011年2月1日(火)開催)