国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

《いのちの輪だち》  Cycle of Life 2013年7月19日刊行

吉田憲司

アフリカのモザンビークでは、1975年の独立後1992年まで続いた内戦の結果、戦争終結後も大量の武器が民間に残された。現在、この武器を農具や自転車と交換して回収し、さらにその回収された武器を用いてアートの作品を生み出そうというTAE (Transforming Arms into Plowshares)「銃を鍬に」というプロジェクトが進められている。みんぱくの企画展「武器をアートに―モザンビークにおける平和構築」でいま展示している作品《いのちの輪だち》は、このTAEのプロジェクトによって制作されたものである。

2011年の11月、私は、モザンビークの首都マプトに赴き、数人のアーティストたちと、日本の人びとにもっとも訴える作品というのはどのようなものかについて議論を重ねた。

TAEのプロジェクトで、武器は農具や自転車、ミシンなどと交換されるが、とくに自転車については、過去15年間、日本のNPO法人えひめグローバルネットワーク[本部・松山市]が日本国内で集めてモザンビークに継続的に送ってきた放置自転車が武器との交換の資材になっている。そこで、自らの意思で武器を捨て、平穏な家族との時間を取り戻した人びとの生活を、武器と交換して得た自転車に乗る家族の姿で表現しようということになった。

作品は、フィエル・ドス・サントス、クリストヴァオ・カニャヴァート(愛称ケスター)のふたりのアーティストとその助手たちの手で、2012年11月に3週間をかけて制作された。私もその制作に立会い、その過程を映像に収めた。

作品の素材になっている武器の種類は、そのまま国際的な武器売買の証である。最も多くみられるのは、旧ソ連製の自動小銃AK47。さらに、その改良型で、中国やポーランド、北朝鮮で製造されたAKMもみられる。重要なことは、これらの武器のどれひとつとして、モザンビーク、いやアフリカでつくられたものでないという点である。

《いのちの輪だち》のなりたちには、モザンビークと世界、そしてモザンビークと日本のつながりも組み込まれている。

吉田憲司(文化資源研究センター教授)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0274165(※企画展終了後、登録予定)

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フィエル・ドス・サントス、クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)作 2012年

◆関連ページ
企画展(連携展示)「武器をアートに―モザンビークにおける平和構築」(2013年7月11日~11月5日)