国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

冥宅 2014年3月21日刊行

陳天璽(早稲田大学准教授/本館特別客員教員)

キッチュなデザインの紙製のおうち。鮮やかな赤や青、そして龍の紋様の切り絵などの装飾が目をひく。出迎えてくれる人形たちの姿もなんだか愛らしい。

三階建てのおうちの中は、リビングやダイニング、キッチン、ベッドルーム、書斎などがあり、テーブル、ソファー、電化製品など、生活に必要なものがそろっている。門の両側には対聯(ついれん)が貼られ、部屋には書画も飾られている。いうならば、中華風のドールハウスだ。ライトを付けて部屋の中を明るくすることもできる。
この様なおうちは、華僑・華人社会でよくみられるものだが、いったい何であろう?子どものおもちゃにしては、紙製なので、すぐ壊れてしまいそうだ。

実は、これは華僑・華人がお盆行事(普度勝会(ふどしょうえ))に先祖に祀る冥宅(めいたく)である。
先祖が、あの世で不自由なく生活を送ることができるようにと祀り、燃やして送る。あの世への供物として、家のほかにも、冥界紙幣、車食料品、携帯電話、パスポート、クレジットカード、iPadなど何でもある。服も高級ブランド品をはじめ寝間着やブラジャーなど下着まで揃う。もちろん、すべて紙製だ。

この冥宅は、アメリカ・ロサンゼルスで入手した。作成者はベトナム出身の華人だ。よって、冥宅のつくりもベトナム建築のおもむきが伺える。華僑・華人が居住する地域によって、冥宅の作りや供物は微妙に違う。文化が融合してゆく、その発見も面白い。

中国地域の展示リニューアルにともない、華僑・華人コーナーが新たに加わった。通常なら祀った後燃やしてしまう冥宅が展示される。ぜひ、おうちのなかまで覗き込んで、じっくり見ていただきたい。キッチュな冥宅から、あの世とこの世のつながりや世界観、そして華僑・華人たちの間で代々引き継がれる独特な文化を楽しんでほしい。

陳天璽(早稲田大学准教授/本館特別客員教員)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0269088/資料名:冥宅

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