国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

身装画像データベース「近代日本の身装文化」近日公開!  2016年4月1日刊行
丸川雄三

ウェブサイト「近代日本の身装文化」が、近日公開予定となった。明治維新後約80年間にわたる日本の身体と装い(身装)を、新聞小説挿絵や当時の写真などの画像から振り返ることができるデータベースである。このウェブサイトは、当館のMCDプロジェクト(みんぱくコスチュームデータベース・プロジェクト)が制作したもので、これらの画像データは、同プロジェクトのメンバーである高橋晴子氏と大丸弘氏が中心に収集整理し分析を行った研究の成果である。なお私は2012年からMCDプロジェクトに関わっており、今回はデータベースシステムとウェブインタフェースの開発を担当した。

近年、例えば江戸から明治期にかけて制作された浮世絵や古写真などは、インターネットでもさまざまな形で比較的容易に閲覧できるようになってきた。しかし「近代日本の身装文化」ほど、分析研究された画像資料をまとまった形で誰もが閲覧できるデータベースは他にはない。学術データベースとして、正確で詳細な出典情報はもちろんであるが、当時の衣服や髪型などのモチーフに対応したキーワードの付与に加えて、研究者による解説(コメント)まで掲載している点も見逃せない。また身装文化全般の背景を250のテーマでわかり易く説明した「参考ノート」も同時に公開する予定であり、専門家はもとより、初学者や一般の利用者にも理解のしやすいたいへん魅力のあるウェブサイトとなっている。

データベースに登録されている身装画像は10,000件である。このうち著作権などの問題で公開が難しいものを除いて、ウェブサイトでは6,000件が公開される。トップページには二つの入り口を設けてある。「一覧から探す」からは、年代別や人名、髪型名などのモチーフをメニューから選ぶだけで身装画像を閲覧できる。「項目から探す」からは、項目別の条件入力による専門的な検索が可能である。いずれも少ない手間で身装画像にアクセスできる工夫をしているが、「髪型」や「洋服」などの一般語から、「文金高島田」や「インバネス」などの特定の用語による検索までを幅広くカバーすることができるのは、質の高い分析情報と豊富な解説情報があってのことである。百聞は一見に如かず。公開されたあかつきには、ぜひ一度、この貴重なデータベースにアクセスしてみてほしい。

丸川雄三(先端人類科学研究部准教授)

◆関連写真

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「近代日本の身装文化」トップページ

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身装画像と解説(コメント)
(「新年梅(36)」東京朝日新聞、1902(明治35)年2月8日号7面、右田年英(1863-1925)筆)

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身装画像の出典情報と分析情報の表示例(同)

◆関連ウェブサイト
MCDプロジェクト