国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

みんぱくでよみがえる、シーボルトの日本博物館  2017年8月1日刊行
園田直子

みんぱくでは、2017年8月10日~10月10日、「よみがえれ! シーボルト の日本博物館」を開催します。江戸時代後期、長崎の出島に医師として来日したシーボルトは、日本の文化や自然に関わる膨大な資料をヨーロッパに持ち帰りました。本展示では、シーボルトが死の直前にミュンヘンで開催した日本展示を、長男アレクサンダーのコレクション目録をもとに、展示の順序、展示ケースの区切りをできるかぎり尊重し復元することを試みています。

シーボルトが、1866年、ミュンヘンでおこなった日本博物館の展示は、階段ホール、第2室、第3室の3部屋にまとめられていました。これは、シーボルトの展示に関する考えを反映しているといえます。ミュンヘンでの展示に先立つ1843年、シーボルトは、フランスのエジプト学者ジョマール宛てに「民族誌博物館の有用性およびそれをヨーロッパ国内に創設することの重要性について」という書状を送っています。そのなかでシーボルトは、ジョマールの博物館構想をたかく評価し賛同していますが、ただひとつ、展示手法については別の意見を述べています。シーボルトは、ものをその種類や用途別に分類して展示することは比較研究においては役立つと認めつつ、ひとつの国に関するものはまとめて展示するという手法を推奨しました。自分のコレクションのサロンは、日本社会がうみだした豊富で高度に完成された品々を、全体を通して展示するとしています。また、このように異国の地に関する知識や情報をまとめて提示することで、植民地をもっている国においては、宣教師や商人たちが相手国の文化や産業の状況を前もって理解することができるので非常に有意義であると、実利的な側面にも言及していました。

夏休みのひととき、シーボルトが見せたかった日本展示をご覧いただき、当時の先端をいくシーボルトの民族学博物館構想にふれていただければと思います。

園田直子(人類基礎理論研究部教授)

 

◆関連写真

「民族誌博物館 シーボルトによる日本コレクションの目録」「水汲みの娘」

魚形蓋物(鰹)


 

◆関連ウェブサイト
「よみがえれ! シーボルトの日本博物館」公式ホームページ(外部リンク)

開館40周年記念特別展「よみがえれ! シーボルトの日本博物館」