国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

車社会の到来――パプアニューギニアの首都交通インフラ  2018年1月1日刊行

林勲男

昨年8月、4年半ぶりにパプアニューギニアの首都ポートモレスビーを訪れた。いつものように空港でレンタカーを借り、まずは国立博物館に向かった。しかし、新しく開通した道路には標識も方向を示す案内板もほとんどない。おまけにレンタカーは日本からの輸入中古車で、カーナビはついてはいるものの、東京都内の地図が表示されたまま全く動かない。15分の道のりのはずが、1時間を要した。

パプアニューギニアは、沿岸部を除いた国土のほとんどが熱帯雨林や湿地帯、そして中央は4000メートル級の山々が連なる山岳地帯である。したがって、最初の主要な交通手段は飛行機であり、各地に小規模の滑走路が数多く造られてきた。そうした滑走路のいくつかは、次第に拡張、整備されて、現在も空港として使われている。道路網も徐々に発達し、特にポートモレスビーでは、人口の集中も反映して、中心街を走る車の台数は急増している。しかも、大型ワゴン車やSUVの増加が目立つ。

英国やオーストラリアの統治の歴史を反映して、交差点にはラウンドアバウト(環状交差点)が設けられていたが、増加する交通量に対応しきれないらしく、信号機がかなり増えたように感じた。しかし、真新しい信号機も故障したままであり、それによってひどい交通渋滞も発生していた。抜け道だと思って進むと、小さな集落に入ってしまったり、工場のゲートで行き止まりであったりする。もちろん、道路マップなどない。

帰国後の10月に、APEC交通大臣会合がポートモレスビーで開催され、「強靱的且つ持続可能な交通やイノベーションを通じた地域連結性」をテーマに議論が交わされたそうだ。同市では、2018年11月にはAPEC首脳会議が開催される。パプアニューギニアにとって、これまでで最も重要な国際会議のホスト国となる。道路網をはじめ、首都のインフラ整備も急ピッチで進められていくことだろう。それが利用者によって安全かつ快適なものとなることを願っている。

林勲男(国立民族学博物教授)

 

◆関連写真

貿易港周辺のシティと呼ばれビジネス地区(パプアニューギニア国立博物館提供)


 

照明灯や標識類はこれから取り付ける(パプアニューギニア国立博物館提供)


 

信号によっては自動車用の赤信号の残り時間が表示される(2017年8月 筆者撮影)


 

◆関連ウェブサイト
パプアニューギニア独立国(外務省)
アジア太平洋経済協力(APEC)(外務省)