国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2009年9月26日(土)
グラン・トリノ
研究領域「包摂と自律の人間学」

国立民族学博物館では2009年秋から<包摂と自律の人間学>をテーマに新しい機関研究を開始します。この機関研究と連動して、テーマにふさわしい映画を選び、研究者による解説付きの上映会を実施します。今回はオープニング記念として、作家の芝崎友香さんをお招きして、多様な価値観をもつ人びとと共生する社会のあり方をみなさんと一緒に考えたいと思います。

第一回 オープニング上映会
「グラン・トリノ」

  • 日   時:2009年月26日(土) 13:30~16:30(開場13:00)
  • 場   所:国立民族学博物館 講堂
  • 解   説:柴崎友香(作家/「その街の今は」織田作之助賞大賞受賞)、乾美紀(神戸大学・国際交流推進本部・特命准教授)
  • 司会・解説: 田村克己(国立民族学博物館 民族社会研究部教授)
  • 定   員:450名
  • 整理番号順にご入場いただきます。
  • 整理券は10:00より講堂入り口にて配布いたします。
  • 事前申込は不要です。
  • 参 加 料:無料(ただし、特別展・常設展をごらんになる方は、別途観覧料が必要です。)
  • 主   催:国立民族学博物館
  • チラシダウンロード[PDF:2.8MB]

「包摂と自律の人間学」
グローバル化の進展にともない、日本国内にはすでに200万人以上の外国籍の人びとが居住しています。また、17組に1組が国際結婚をしている時代です。多様な文化的背景をもつ人びととの共生を実現するために、どのような社会を築いていけばよいのでしょうか。新しい機関研究「包摂と自律の人間学」では、人々の違いを承認=<包摂>し、移民や難民に限らず、無国籍者、障害者、失業者など社会的に弱い立場にある人びとが自分らしさを生かすこと=<自律>のできる公正で平等な社会を実現する方策について考察します。そして、世界各地に視野を広げて、支援の現場を検討してゆきます。

 

上映作品

「グラン・トリノ」
(製作:アメリカ映画/英語・モン語 2008年 日本語字幕つき117分 シネマスコープサイズ)
監督・主演:クリント・イーストウッド
出演:ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー

 

映画解説

人気スターから監督業にも進出し、世界中の映画人が、心より敬意を表するクリント・イーストウッド。80歳を目前に控えてなお意気盛んな名匠が、“最後の主演作”に選んだ1本は、正義と暴力との間で苦悩するアウトローという、これまでの集大成的な主人公の人生の落とし前に、胸打たれる傑作だ。愛犬相手にビールをあおる、偏屈な男やもめの単調な日常を変えたのは、彼の愛車・グラン・トリノを機に、奇妙な信頼関係で結ばれていく、隣に住むアジア系移民の少年。朝鮮戦争、ベトナム戦争、9.11など、米国の負の近代史を巧みに織り混ぜつつ、人種や世代を超えて受け継がれるべき、人間としての誇りに、イーストウッドの想いが込められている。

「アメリカ映画に見る包摂への道」

『国境を越えた民族のつながり』

解説:乾美紀

アメリカにはラオスからの難民、モンが20万人以上暮らしているが、この事実はアメリカでも一般には知られていない。モンは約5000年前から中国に繁栄していたが、中国を追われ一部が東南アジアの山岳地帯に移住した。モンは一度として自分の国を守れたことがないのだ。ベトナム戦争がまた彼らの歴史を変えた。山岳地での戦いに強いモンは、米軍の傭兵となり反共活動を行った。そしてベトナム戦争に負けた時に行き場をなくし、アメリカに難民として移住せざるを得なかったという複雑な歴史を抱えている。現在でも彼らはアメリカのモンの旧正月を祝う祭りを開催したり、英語しか話せなくなった子どもたちにモン語を教えるなど、積極的にそして静かに彼らの文化を保っている。

 

お問い合わせ先

国立民族学博物館 企画連携係
〒565-8511 吹田市千里万博公園10-1
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