国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2010年11月3日(水)
トゥルー・ヌーン―イワノビッチの村
研究領域「包摂と自律の人間学」

国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を始めました。第2期にあたる2010年は、さらに<国境と民族>をキーワードにして、映画上映を展開していきます。今回は、ソ連崩壊によって各共和国が、<国境>という境界線で分断された時のドラマを描いたタジキスタン映画です。一夜にして隣人が異国人になってしまう状況を通して、<国境>の存在について、皆さんと考えたいと思います。。

  • 日 時:2010年11月3日(水・祝) 13:30~16:00(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    • 整理券は10:00より講堂入口にて配布いたします。
    • 事前申込は不要です。
  • 参加料:無料(11月3日は無料観覧日となります。本館展示・特別展示ともに無料でご覧頂けます。) 
  • 主 催:国立民族学博物館
  • 協 力:アジアフォーカス・福岡国際映画祭
  • チラシダウンロード[PDF:2.3MB]

みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―国境と民族を越えて― 第7回上映会

「トゥルー・ヌーン―イワノビッチの村」 True Noon
2009年/タジキスタン映画/タジク語/83分/日本語字幕つき
【開催日】2010年11月3日(水・祝) 13:30~16:00(開場13:00)
【監督】ノシール・サイードフ
【出演】ユーリー・ナザーロフ ナシバ・シャリポワ ナスリディン・ヌリディノフ
【司会・解説】陳天璽(国立民族学博物館・先端人類科学研究部准教授)
【解説】島田志津夫(東京外国語大学非常勤講師)
「タジキスタンの現在」

ソ連時代、連邦内の共和国間の国境は、たとえばアメリカの州境程度の意味しか持っていなかった。人々は、国境を超えて比較的自由に行き来し、日常生活を送ることができた。しかし、1991年のソ連崩壊により各共和国が独立国となり、突如人々の生活の前に「国境線」が出現したのである。これは、旧ソ連各地で見られた現象であった。また独立後92-97年に内戦を経験したタジキスタンでは、内戦中に埋設した地雷や隣国ウズベキスタンが反政府ゲリラの侵入を防ぐ目的で国境地帯に埋設した地雷が社会問題となっており、今なお一般市民にも犠牲者がでている。本作では、この二つのテーマが山岳地帯の美しい自然と色彩豊かな民族的情景とともに描き出されている(島田志津夫)

[映画解説]

ソ連崩壊後初の、タジキスタン製作の長篇劇映画。ソ連邦崩壊後、境界近くの山岳地帯に、隣り合う二つの村があった。村人同士も仲がよく、気象観測所では、ロシア人が長く駐在し、家族の待つ故郷に帰るのを楽しみにしていた。そんなある日、境界上に鉄条網が張られ、お互いの村を自由に行き来できなくなる。村人の日常が“国境”に翻弄される中、ロシア人は益々遠ざかる故郷への想いを胸に、我が子のような助手の村娘が隣り村に嫁げるよう、孤軍奮闘する。結婚当日、式も何とか無事に終わりかけたその時、衝撃のラストが襲う。本作で長篇デビューを飾る監督は、紛争の絶えない世界情勢を反映させた上で、良心の象徴にも見える不屈な男に、平穏な未来へのかすかな祈りを託している(服部香穂里)

「包摂と自律の人間学ー国境と民族を越えてー」国立民族学博物館 陳天璽

地球人口が68億人である今日、生地を離れ他国に暮らす移民は2億人に上がり、全人口の約30人に1人にあたります。国境は、人の頻繁な 越境や情報化により、その存在が薄まっているように思えます。民族間の交流や国際結婚も増え、人を民族や国籍別に区別することも難しくなっています。しかし、現代社会は国家や民族、宗教によって人を分類するきらいがあるのも事実です。それゆえ、はざまにおかれ苦悩を抱えながら生きている人は少なくありません。人の違いを認めて包摂し、移民や無国籍者など社会的マイノリティーが自分らしさを生かして自律できる社会を実現するには、どうすればよいのでしょうか。映画に描かれる一人一人の生き様を通して、国家とは、国籍とは、民族とはなにかについて考え、国境を越えた人と人のつながり、支援のありかたを模索します。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
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