国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2012年7月14日(土)
路上のソリスト
研究領域「包摂と自律の人間学」

チラシダウンロード[PDF:3.49MB]

国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第4期は<支援と絆>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は、アメリカ映画「路上のソリスト」を上映します。路上に暮らす天才チェリストと彼を取材する新聞のコラムニストとの交流を通して、支援について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

  • 日 時:2012年7月14日(土) 13:30~16:30(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    • 整理券を10:00から講堂入口にて配布いたします。
    • 事前申込は不要です。
  • 参加料:無料
  • 主 催:国立民族学博物館

● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―支援と絆― 第16回上映会

「路上のソリスト」
2009年/アメリカ映画/英語/117分
【開催日】2012年7月14日(土) 13:30~16:30(開場13:00)
【監督】ジョー・ライト
【出演】ジェイミー・フォックス、ロバ-ト・ダウニーJr
【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
【解説】佐野章二(ビッグイシュー日本代表)
「映画解説」

名門音楽学校でチェロを学びながらも、ある事情から路上での生活を選んだ演奏家と、その奏でる繊細な音色に惹かれるうちに、彼との信頼関係を築いていく記者との交流を綴り、多くの読者の心を掴んだロサンゼルス・タイムズ紙のコラムの映画化。実話をユニークな視点で捉え直した英国の気鋭・ジョー・ライト監督の指名を受け、『アイアンマン』『シャーロック・ホームズ』シリーズで、一筋縄ではいかないヒーロー像を打ち出すロバート・ダウニー・Jrが、職業的な正義感や野心に駆られるジャーナリストの、人間としての真の友情に目覚めていく姿に、説得力を与えている。善意からの行為であれ裏目に出る危険を伴う、支援活動のジレンマにも目を向けつつ、相互を尊重し、理解を深め、支え合う姿勢の大切さが、音楽のもつ普遍的な力を通して、ダイレクトに伝わる好篇である。(服部香穂里)

映画「路上のソリスト」にみる支援・被支援の人間関係

この映画は、ホームレスになった音楽的才能豊かなナサニエルと、彼と出会った新聞記者ロペスの再生の物語である。
記者ロペスにとってナサニエルは何よりも取材対象であり、彼が著名な音楽学校の元学生でなかったら興味は持たなかったはずだ。次にロペスは彼を記事にし、読者から贈られてきた楽器を彼に提供する。そして、善意に支援者となったロペスはナサニエルの音楽的感受性に感動し、ナサニエルもまたロペスを敬うようになっていく。しかし、ロペスが、ナサニエルを社会復帰させようとした時、2人の間に大きなすれ違いが生じる。困惑しながら、ロペスはナサニエルとの付き合い方を学んでいかざるをえなかった。
このロペスとナサニエルの関係は、ホームレスのように社会から排除された人々と、彼らを支援したいという市民の関係に重ねて見ることができる。映画と同様に、支援されるナサニエルよりも支援するロペスの方が人間として変化を遂げていくことは現実にもある。
また映画では、ナサニエルがホームレス状態になった一因として心の病が示唆されているが、最近、日本でも増えつつある若いホームレスの人には同様の問題を抱えるケースが多く見られるようになっている。(佐野章二)

「包摂と自律の人間学―支援と絆―」国立民族学博物館 鈴木紀

包摂とは、自分では解決できない困難を抱えている人に対して、他の人や社会全体が支援の手をさしのべることを意味します。自律とは、支援を受けた人が少しずつ自信をつけ、やがて自分でその問題に向きあえるようになることを意味します。このように包摂と自律を実現するためには、支援という行為が鍵になります。それでは、よい支援とはどのようなものでしょうか。それは支援する人と支援を受ける人との間に信頼感が育まれ、相互に強い絆を意識するような場合ではないでしょうか。もとより、おざなりな支援からは絆は生まれませんが、過剰な支援も絆を支配従属関係に変えてしまう危険性があります。そのためよりよい支援のためには、なぜ、どのくらい、いつまで、誰に支援するか/誰から支援を受けるかが問われることになります。支援と絆をめぐるこうした問題を、映画を通して考えましょう。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
Tel: 06-6878-8210(土日祝を除く9:00~17:00)