国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2014年8月30日(土)
ヒア・アンド・ゼア

研究領域「包摂と自律の人間学」


チラシダウンロード[PDF:1.56MB]

国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第6期は<多文化を生きる>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回はメキシコの家族を描いた「ヒア・アンド・ゼア」です。アメリカでの数年間の出稼ぎ労働から故郷に帰った父親の、家族との再会と新たに築き上げていく生活模様を通して、異文化に働きに出る人々と、その人を送り出し故郷で待つ家族の心情と現況を見つめていきたいと思います。

  • 日 時:2014年8月30日(土)13:30〜16:30(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    • 入場整理券を10:00から講堂入口にて配布いたします。
    • 事前申込は不要です。
  • 要展示観覧券(一般 420円)
  • 主 催:国立民族学博物館
 

● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律>―多文化を生きる― 第27回上映会

ヒア・アンド・ゼア Here and There / Aquí y Allá
2012年/メキシコ=スペイン=アメリカ合作/スペイン語・ナワトル語/110分/日本語字幕付き<日本劇場未公開>
【開催日】2014年8月30日(土)13:30〜16:30(開場13:00)
【監督】アントニオ・メンデス・エスパルサ 
【出演】テレサ・ラミレス・アギレ、ペドロ・デ・ロス・サントス・フアレス
【司会】菅瀬晶子(国立民族学博物館助教)
【解説】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
「映画解説」

メキシコの小さな山村を舞台に、雇用不足などにあえぐ地方の深刻な現状を、ある一家のささやかな日常を通して、静かなトーンながらもリアルに映し出し、カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリに輝いた佳篇。出稼ぎ先のアメリカから妻子の待つ故郷に、数年ぶりに戻った夫は、持ち帰ったキーボードを携え、密かに夢見ていたバンド活動を始める。異国で忙殺される間に、難しい年頃を迎えた娘との距離をゆっくりと縮めつつ、新たな生命も授かり、つましくも幸福な月日が流れていく。だが、働きたくても、よい仕事が見つからない現実の壁が立ちはだかる。本作が長篇デビューとなるアントニオ・メンデス・エスパルサ監督は、現地の声をすくい取った脚本を実際に彼ら自身に演じさせ、離ればなれでも心で深く想い合う、ある家族の愛の在りようを、シンプルかつ強靭な描写を丹念に積み重ねることで、細やかに紡ぎ上げた。(映画評論家 服部香穂里)

国境の「こちら」側の移民の暮らし

メキシコ人のアメリカへの大規模な移住は1942年から64年にかけて実施されたブラセロ計画に端を発する。農業の人手不足を補うためにアメリカ政府がメキシコ政府に労働者の派遣を要請し、450万人のメキシコ人がアメリカに渡った。それ以後も、仕事を求めてアメリカに移住するメキシコ人は後を絶たない。こうした移民の中にはアメリカ市民権を得て定住する者もいるが、多くはメキシコとアメリカの間を往来する循環移民といわれる人たちだ。この映画の主人公ペドロも、そうした移民の一人だ。映画では、彼がアメリカから「こちら」側のメキシコに戻り、故郷で過ごす数年間が描かれている。その描写から現代メキシコ社会のさまざまな様子がうかがえる。ほっとするのは人の暖かさだ。久しぶりの帰郷にとまどうペドロを、家族や友人はゆっくりと受け入れていく。一方、暮らしは厳しい。ペドロは、音楽でも農業でも建設業でも安定した収入が得られない。妻の出産に際しては、ある程度の医療サービスは受けられたが、自己負担は重い。これらは、メキシコ社会の包摂力が不十分であることの現れである。そのためペドロはメキシコに安住できず、再び「むこう」を目指す。家族の絆が強まった後だけに、それは一層つらいことだろう。この映画から、循環移民が生まれる理由と、彼らの境遇を推察することができる。(鈴木紀)

「包摂と自律の人間学―多文化を生きる人々の映画を見る―」国立民族学博物館 鈴木紀

国内外を問わず自分の故郷を離れて異郷に暮らす時、私たちは必ずマイノリティ(少数者)になります。そこが安住の地となるか否かは、周囲の人々が私たちをどのように包摂するか、そして私たち自身がどれだけ自律しているかにかかっています。隣人から暖かく迎えられ、自分に自信が持てると、居心地がよいものです。ところがその安堵感は、些細なうわさや事件、予期せぬ災害や不景気などをきっかけに、暗転することもあります。社会のストレスはしばしば、少数者に向けられるからです。このような緊張感は、<移民>や<外国人労働者>など、多文化環境に生きる人々を描く映画からうかがい知ることができます。まずは少数者の目線にたって、その境遇を実感してみましょう。次に多数者の目線から、少数者の葛藤を眺めてください。そうすれば映画を見終わってみんぱくを出た途端、慣れ親しんだ私たちの日常生活が少し違って見えてくるかもしれません。

関連イベント

展示場ミニレクチャー

本館のナビひろばにて、鈴木紀(本館准教授)によるメキシコ移民映画の解説をおこないます。

  • 日時:2014年8月30日(土)上映当日 11:30~12:00(予定)
  • 場所:国立民族学博物館 本館展示場(ナビひろば)
  • 参加無料 (要展示観覧券)/申込不要/定員なし
  • 詳しくはこちら
■お問い合せ先
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
Tel: 06-6878-8210(土日祝を除く9:00~17:00)