国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2016年1月30日(土)
あの日の声を探して

研究領域「包摂と自律の人間学」


チラシダウンロード[PDF:1.37MB]

国立民族学博物館では<包摂と自律>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。7年目の今期は<マイノリティ・ボイス=少数派の声>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回はフランス=ジョージア映画「あの日の声を探して」です。1999年、ロシアに侵攻されたチェチェンを舞台に、両親を殺害され声を失った少年、自分の無力さに悩むEU人権委員会の女性職員、強制的に徴兵されたロシア青年の3人の姿を描く感動作です。戦況の中を生き抜く、それぞれ立場の違う人間の苦悩について、皆さんとともに考えたいと思います。

  • 日 時:2016年1月30日(土)13:30〜16:30 (開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    ※入場整理券を11:00から観覧券売場(本館2F)にて配布します。事前申込は不要です。
  • 要展示観覧券(一般 420円)
  • 主 催:国立民族学博物館
 

● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律>─マイノリティ・ボイス=少数派の声─ 
第32回上映会

あの日の声を探して The Search
2014年/フランス・ジョージア(旧グルジア)/135分/フランス語・英語・ロシア語・チェチェン語/日本語字幕付き
【開催日】2016年1月30日(土)13:30〜16:30 (開場13:00)
【監督】ミシェル・アザナヴィシウス
【出演】ベレニス・ベジョ アネット・ベニング マキシム・エメリヤノフ
【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
【解説】中村唯史(京都大学大学院教授)
「映画解説」

「アーティスト」(11)でアカデミー賞5部門ほか数々受賞したフランスのミシェル・アザナヴィシウスが、ロシア進攻下のチェチェンを舞台に、甚大な影響を及ぼす戦争の実情をリアリティ豊かに描く力篇。99年のモスクワでのテロ以降、犯人と断じられロシアから無差別攻撃に遭うチェチェン。EU人権委員会のフランス人女性職員は、九死に一生を得た難民の聴き取り調査に励むが、ミレニアムに沸く世間の無関心に徒労を覚える。ロシア兵に両親を殺された上に幼い弟も手放し、声を失った少年は、絵や音楽を介して女性職員と心を通わせ合う。青春を謳歌するロシア人青年は、小さな過ちから軍に強制入隊させられ、上官らの非道な暴力の末、過酷な戦場に送られる。ユダヤ人の血を引くアザナヴィシウスは、ユダヤ人とアメリカ兵との交流を描く米映画「山河遥かなり」(47)に想を得て、現代的視点で再映画化。気持ちばかり空回りする女性が、深い悲しみと闘う少年に突き動かされる様に共感を寄せる一方、朗らかな若者の心身を蝕む戦争の狂気をも炙り出す。弟を懸命に探す姉により、運命の明暗が皮肉に交錯するエンディングが、先の見えない闘いの虚しさを印象づけつつ、解決の糸口は個々の行動にしかないことも、切実に訴えかけている。(映画評論家 服部香穂里)

ロシアとチェチェンの200年

本作品の舞台チェチェンは、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサスに位置している。ロシア帝国は18世紀後半からこの地域への進出を始め、19世紀前半までにほぼ全域を領土とした。ロシア本国と陸続きのために明確には意識されなかったが、大英帝国のインド、フランスのインドシナ半島などと同様の植民地化に他ならなかったこの過程で、イスラム神政国家をめざし、ロシアの支配に抵抗したのがミュリディズムという運動である。チェチェン人は、教主のシャミールらアヴァル人とともに、この運動を底辺から支えた。1859年に敗北するまで30年以上に渡った彼らの抵抗は、文豪トルストイが小説『ハジ・ムラート』を書くなど、ロシアの知識層にも感銘を与えた。チェチェンはソ連邦成立後、一定の民族自治を享受しつつも、スターリン独裁体制下で中央アジアへ強制移住させられ、多くの人命を失うなど、苦難の道を歩んだ。ソ連邦崩壊後、チェチェン共和国政府はロシア連邦からの完全独立を試みたが、連邦軍が1995年、1999年の二度に渡って侵攻した結果、独立派ゲリラだけでなく、ロシア人を含む一般住民にも多数の犠牲者が出た。本作品はこの二度目の侵攻時の物語である。(中村唯史)

「包摂と自律の人間学―マイノリティ・ボイス=少数派の声—」国立民族学博物館 鈴木紀

マイノリティ=少数派であるとは、どのようなことなのでしょうか。それは、自分の悩みが周囲に共有されず、寂しさや心細さを感じている状態だと考えてみましょう。そういう時には、自分が何をすべきか判断し(=自律)、必要ならば助け求める(=包摂)ことが望ましいのですが、なかなかそうはいきません。声に出すと、自分がますます不利にならないか、家族や友人に迷惑がかからないかと気後れします。あるいは直面している問題が大きすぎたり、恐ろしすぎたりする場合には、言葉を飲み込んでしまうかもしれません。今年度のワールドシネマでは、少数派の人びとの境遇を描いた映画を見ていきます。マイノリティの声に耳を傾け、声にすらならない感情に触れてください。その経験が、周囲にマイノリティがいることに気づいた時、そして私たち自身がマイノリティであると感じた時に、勇気をもって行動することに役立つことを願っています。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 企画課博物館事業係
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
Tel: 06-6878-8210(土日祝を除く9:00~17:00)