国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2016年12月4日(日)
パレードへようこそ

チラシダウンロード[PDF:3.31MB]

国立民族学博物館では2009年度から、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。8年目の今期は<出会いと創造>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は1984年サッチャー政権下のイギリスを舞台に、ストライキを敢行する炭坑労働者と、彼らを支援するゲイグループが、理解しあい結束するまでを描いたイギリス映画「パレードヘようこそ」です。異なった環境や立場にいる人びとが、偏見や差異をどのように乗り越え、交流することが出来るかを考えたいと思います。

  • 日 時:2016年12月4日(日)13:30~16:30(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    ※入場整理券を11:00から観覧券売場(本館2F)にて配布します。事前申込は不要です。
  • 要展示観覧券(一般 420円)
  • 主 催:国立民族学博物館
 

● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<出会いと創造>
第35回上映会

パレードへようこそ PRIDE
2014年/イギリス映画/121分/英語/日本語字幕付き
【開催日】2016年12月4日(日)13:30~16:30(開場13:00)
【監督】マシュー・ウォーチャス
【出演】ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、ドミニク・ウェスト
【司会】松尾瑞穂(国立民族学博物館准教授)
【解説】吉田俊実(東京工科大学教授)
「映画解説」

炭坑が次々と閉鎖に追いやられていた80年代のイギリスで、ウェールズの小さな炭坑町の人びとと、ロンドンの同性愛者たちが手を携え、ともに逆境に立ち向かった実話を、温かなユーモアで包み込み映画化。不況にあえぐサッチャー政権下の84年、リーダーシップに秀でたゲイの青年は、泥沼のストライキを続ける炭坑労働者に、社会から疎外された身として共感を覚え、"LGSM(炭坑夫支援レズ&ゲイ会)"を発足し、寄付金集めに奔走する。エイズの蔓延などが、同性愛者への理不尽な差別や偏見を助長する中、片田舎のディライス炭坑では、大らかな人柄の代表者を中心に、理解の輪が徐々に広まり、両者は揺るぎない親愛を育んでいく。演劇畑出身のマシュー・ウォーチャス監督は、家族にすらカミングアウトできずにいる青年、信心深い母と長く絶縁状態の息子、自身に潜む能力に目覚める主婦ら、刺激に満ちた交流を重ねて前進する人びとを、細やかに活写。名優から新人まで、多彩な演技陣を見事に束ね、実在の人物に新たに息を吹き込む。ユニークな個々を尊重し合い、行動へと踏み出す勇気が、希望の光を照らすことを清々しく謳い上げ、ゴールデン・グローブ賞ノミネートを果たす佳篇となった。(映画評論家 服部香穂里)

二つの歌が交差するとき

1984年、サッチャー政権下のロンドンでは、赤字炭坑閉鎖に抗議して炭坑労働者たちがストライキを起こしていた。その様子が、連日、報道されている。ストライキを巡って警官ともみ合いになる。逮捕者が出る。ゲイのマークは「政府や警官たちにいじめられているのは自分たちと同じだ」と感じ、炭坑労働者たちを支援しようと仲間に持ちかける。
この映画には、印象的な二つの歌が登場する。ひとつは、トム・ロンビンソン・バンドが1977年に出した「2-4-6-8モーターウェイ」であり、バンドを率いるトム・ロビンソンはゲイであることを公表して活動したパンク・ロッカーである。もうひとつは、「パンと薔薇」。20世紀初頭にアメリカ・マサチューセッツ州の繊維工場で起こったストライキのさいにスローガンとして使われた詩が歌われたものである。
人びとの思いが二つの歌に託されている。そして、ロンドンの性的マイノリティと南ウェールズの炭坑労働者という、ほとんど接点のない人びとのあいだに不思議な交流が生まれ、お互いを理解しようとする努力や共感が広がっていく。この映画が実話に基づくと知るとき、私たちはこの映画の放つ希望の光に触れたような気がするのだ。(吉田俊実)

映像に描かれる<出会いと創造>国立民族学博物館 鈴木紀

グローバリゼーションにともなう人と情報の地球規模の移動により、世界では移民や異なる文化をもった人びととの遭遇・接触・摩擦が増加しています。その結果、移民の排斥や狭小なナショナリズムの高揚など、異なる文化を持つ人に背を向ける傾向が一部に見られるようになってきました。これは異文化理解にもとづき人間の文化的多様性を探求する民族学/文化人類学にとって看過できない事態です。異質な他者との遭遇を、潜在的な脅威として否定的にとらえるのではなく、新たな文化の創造の機会として肯定的にとらえる「共創」の態度の涵養が重要でしょう。「出会いと創造」というテーマは、このような今日的課題に対する国立民族学博物館からのメッセージです。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 企画課博物館事業係
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
Tel: 06-6878-8210(土日祝を除く9:00~17:00)