国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2018年11月4日(日)
彷徨える河

チラシダウンロード[PDF:2.9MB]

国立民族学博物館では2009年度から、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。10年目の今期は昨年に引き続き、<人類の未来>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は、アマゾン流域の奥深いジャングルを舞台に、孤独に生きる先住民族の呪術師と、時を隔てて彼を訪ねる二人の白人探検家との出会いを、幻想的なモノクロの映像で描いたコロンビア映画「彷徨える河」を上映いたします。先住民の視点で描いた“秘境”をとおして、彼らの知恵や自然と人間との関係について知りたいと思います。

  • 日 時:2018年11月4日(日)
        13:30~16:30(開場13:00)
  • 場 所:ホテル阪急エキスポパーク
        多目的ホール(オービットホール)
        〒565-0826 大阪府吹田市千里万博公園1-5
      
    ※館外での開催となります。ご注意ください。
  • 定 員:400名
  • 参加費:無料
      ※参加券を11:00から多目的ホール(オービットホール)
       前受付にて配布します。事前申込は不要です。
  • 主 催:国立民族学博物館
 

● みんぱくワールドシネマ 映像から考える<人類の未来>
第43回上映会

彷徨える河 El abrazo de la serpiente / Embrace of the Serpent
2015年/コロンビア・ベネズエラ・アルゼンチン/124分/スペイン語ほか/日本語字幕付き
【開催日】2018年11月4日(日)13:30~16:30(開場13:00)
【監督】シーロ・ゲーラ
【出演】ヤン・ベイヴート ブリオン・デイビス アントニオ・ボリバル・サルバドール
【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
【解説】八木百合子(国立民族学博物館助教)
「映画解説」

自然の神秘が息づくアマゾン川流域を舞台に、シャーマンの能力を秘めたまま俗世間に背を向ける先住民のカラマカテが、その地に魅せられた二人の訪問者との奇妙な旅をとおし、自身のルーツを見つめ直す壮大な力篇。資源や同胞の生命まで奪い去った西洋人への憎しみを胸に、アマゾン奥地に隠遁するカラマカテは、重病にあえぎ救いを求めにきたドイツ人民族学者に嫌悪感を示しつつ、病を癒すとされる幻の植物を探しに小舟を遡上させる。数十年の歳月が流れ、途方もない孤独との格闘の末、誇り高きアイデンティティさえ見失いかけていたカラマカテだったが、1冊の本を携え現れた米国人植物学者に懇願され、再び川上へと漕ぎ出す。国際的に脚光を浴びるコロンビアの気鋭監督シーロ・ゲーラは、実在した二人の探検家の手記を咀嚼し、収奪や侵略の歴史に翻弄されながらも、自然を畏怖し独自の文化を守り抜く民族を、憧憬と敬意を込めて描出。陰影に富むモノクロームの映像美が、過去と現在、現実と幻想との間を行き交う魅惑の世界へと観る者を誘い、コロンビア史上初のアカデミー賞外国語映画賞候補となったほか、カンヌ国際映画祭など映画賞を席巻した注目作だ。(映画評論家 服部香穂里)

アマゾン先住民の光と影

舞台はコロンビア南東部のアマゾン上流域。20世紀前半、約30年の時を隔てて実際に同地を訪れた二人の白人探検家の手記をもとに本作は編まれている。しかし本作は、白人探検家による単なるアマゾン旅行記などではない。白人の手記をもとにしながらも、アマゾンの神秘的かつ幻想的な世界を先住民の視点から映し出しているのだ。鍵となるのは、若き頃と老年期の二度にわたり、彼らの旅に同行した先住民カラマカテである。彼はアマゾンに暮らすシャーマンで、幻覚や夢を通じて超自然的存在と交渉したり、そのお告げを聴いたりする。夢に忠実に従い生きるカラマカテの言葉からは、ジャングルに生きる人の世界観や知識体系を垣間見ることができる。いつしかその神秘的世界に魅了される一方で、アマゾンの惨憺たる現実も突き付けられる。19世紀中頃から20世紀初頭、ゴムブームに沸いたアマゾンだが、その裏で先住民たちは強制労働や殺戮など多くの犠牲を強いられてきた。白人に対して憎悪や疑念を抱きつつ、それでも彼らとともに旅に出るカラマカテ。旅のなかでは、ときに互いの価値観を衝突させながらも、ジャングルに生きることとは何か、そして西洋人のいう科学では説明できないカラマカテの世界を教えてくれる。(八木百合子)

 
映像から考える<人類の未来>国立民族学博物館 鈴木紀

国立民族学博物館では2016年度より特別研究「現代文明と人類の未来─環境・文化・人間」を開始しました。これは、現代文明の諸課題に対して解決志向型のアプローチをとる研究です。現代文明は物質的な豊かさと普遍的な価値観を広めましたが、同時に環境破壊や文化摩擦を生み出しています。民族学や文化人類学の立場からは、現代文明の矛盾はどのように現れるのか、そしてその解決策は何かを、地域社会や民族文化に視点を据えて考えることが重要です。みんぱくワールドシネマのねらいは、この特別研究の問題意識を来館者の皆様と共有することにあります。世界の映画をとおして、現代文明を問い直し、多元的な価値が共存する人類の未来を展望したいと思います。

地図

ホテル阪急エキスポパーク 多目的ホール(オービットホール)
〒565-0826 大阪府吹田市千里万博公園1-5

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