国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

特別展「世界大風呂敷展」

特別展「世界大風呂敷展 布で包む ものと心」開催期間:2002年10月3日(木)~2003年1月14日(火)
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館長あいさつ


展示開催のごあいさつ


 風呂敷といえば、日本独自のもののように思われがちですが、けっしてそうではありません。世界中の、布の文化をもつ民族には、多かれ少なかれ、風呂敷のような機能をもつ布があります。その使いかたも共通性が多く、たとえば頭上に風呂敷包みをのせて運ぶ風景は、世界各地にみられます。頭上運搬は、今でこそ日本であまりみかけなくなりましたが、平安時代以来、庶民の風俗として、絵巻物をはじめ、いろいろな絵画のなかに描かれています。もはや、風呂敷は日本文化である、という「常識」はあらためなければなりません。

 今回の展示には、「布で包む ものと心」という副題がついています。風呂敷の役割は、まとめにくいものを包んで運ぶ、という運搬の便利さにあるのは、もちろんです。しかしそれにとどまりません。風呂敷や袱紗で包みますと、「ていねい」という心も相手に伝わります。つまり包むことによって、新たな意味付けが加わるのです。これが「布で包む ものと心」です。

 その例として、「祈りと祝い」という展示が用意されています。なくなった方の遺体を包むことは、布で包む人類の文化としては大変古く、また普遍的かもしれません。今日も、世界各地に貴重な布で遺体を包む文化があります。人びとは祈りの心をこめて遺体を包み、聖なるものへと新たに変身させるのです。新しい意味と価値を付け加えるという点で、結婚の嫁入り道具にかける祝い風呂敷も、同じように考えられます。

 われわれの周囲では、最近、風呂敷の存在が忘れられかけています。こんなに便利で美しいものを捨ててはもったいないことです。また大量消費文化の過剰包装と紙袋の利用に押し流されそうな今日です。その反省にたって、もし、ここで風呂敷文化を見直すことになれば幸いです。そのためには、既成の概念にとらわれない、新しい風呂敷の提案が必要だと思います。デザイナーのヨーガン・レール氏にお願いして、使う人が多様な使い方を工夫できる新しい風呂敷を創作していただきました。あわせてご覧ください。

 今回の展示にあたりましては、貴重な世界の風呂敷コレクションを提供してくださいました宮井株式会社をはじめ、国内外の各機関、各位の多大な御支援に対し、厚く御礼申し上げます。また、全国から数多くの風呂敷の御寄贈をいただき、展示に一段の広がりを加えることができました。御寄贈くださいました皆様にも厚く御礼申し上げます。

 この展覧会を機に、世界の民族文化に対する理解が一段と深まれば、これに過ぎる喜びはありません。

2002年10月 国立民族学博物館
館長 石毛直道