国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

企画展「みんぱく水族館」

会場は、日本:「漁撈」オセアニア:「航海と交易」南北アメリカ:「アートと表現」アジア:「生活の中の魚」アフリカ:「イマジネーション」という、5つの地域と人と水族の関係を特徴づけるそれぞれのテーマにそって民族資料を展示しています。水族も各地域ごとに水槽を設置し、約30種380匹を展示しています。
日本 ─ 漁撈
えびすの置物
えびすは、大漁をもたらす神様として信仰されてきました。現在でも、神像や飾り物が各地の漁村で見られます。また、商売繁盛の神様としても知られるが、鯛を抱える姿は変わりません。このことは、日本人にとって魚が単なる食材でなく、富の象徴でもあることを示しています。
 
マダイ 学名:Pagrus major
分布:北海道以南~尖閣諸島;朝鮮半島南部、東シナ海、南シナ海、台湾

水深10~200mの大陸棚上にすみ、エビやカニ、ヒトデ類、魚類などを食べます。日本では古くから美味な魚として親しまれ、祝いの席には欠かせないめでたい魚とされてきました。産卵期前の春先には体色も鮮やかになり、桜ダイとも呼ばれます。この時期のマダイは活発に餌を食べ栄養を蓄積するため、特に美味です。

 

オセアニア ─ 航海と交易
クラ交易に用いられる腕輪
クラ交易は、ニューギニア島に近いトロブリアンド諸島でおこなわれている交易です。隣島の人びとから腕輪を受け取った島民たちは、しばらく手元においた後、反対側の隣島にこれを贈ります。貴重なものを気前よく隣人に与えることで、島のあいだの人間関係を維持しています。腕輪の材料には、貝殻(イモガイ)が用いられています。
 
カクレクマノミ 学名:Amphiprion ocellaris
分布:奄美大島以南;~西部太平洋

ハタゴイソギンチャクに好んで共生します。一つのイソギンチャクには普通、成魚2尾と幼魚がすんでおり、大きな方の成魚はメスです。卵はイソギンチャクのそばの岩肌に産みつけられ、オス・メス共同で卵を守ります。ただし、卵の世話はオスの方が熱心で、ヒレを使って新鮮な海水を送ったり、口で死んだ卵を取り除いたりします。オスからメスに性転換することが知られています。
 

南北アメリカ ─ アートと表現
チュルカナスの土器(ペルー)
今から30年ほど前、インカ時代かそれ以前に失われたやきものの技術を再現しようと、ペルーの若い職人がこの様式の土器を製作しました。古くて新しいこの様式は、ペルー国内のみならず、広く世界じゅうで知られています。魚は、そうした文化復興にかかわるモチーフとしても、しばしば用いられます。
 
ネオンテトラ 学名:Paracheirodon innesi
分布:アマゾン河

アマゾン河上流域のジャングルを流れる小川や小さな池にすんでいます。ネオンテトラの鮮やかな体色は、生息域の褐色~黒色の濁った水中でお互いがコミュニケーションをとるのに役立つと思われます。逆に夜はくすんだ紫がかった体色に変化し、川底で静かに休むことで目立たなくなり、捕食者から身を守っていると思われます。

 

アジア ─ 生活の中の魚
サケ皮の衣服(ロシア)
サハリン州で用いられていたものです。アイヌをはじめ北方アジア先住民の人びとにとって、サケは食糧資源としてだけでなく、衣服などの日用品を作る材料としても貴重でした。アイヌの人びとには、神から与えられたサケを大切に扱う信仰もあります。
 
タンチョウ(丹頂) 学名:Carassius auratus
中国原産。全身が白く頭頂部だけ赤い斑紋があるのでこう呼ばれます。中国名は紅頭魚(ホントウユイ)。中国において、色のついたフナの記録は唐の時代(7~10世紀)から見られますが、その後中国においてさまざまな変種や変型が作り出され、愛玩動物として親しまれてきました。金魚が日本に初めて輸入されたのは、1502年とされています。
 

アフリカ ─ イマジネーション
魚形棺桶(ガーナ)
ガーナ共和国で普及している奇抜なデザインの棺桶は、いまや、アフリカ現代美術の代表的ジャンルとしても知られるようになりました。棺桶のモチーフは、依頼主からの注文にしたがって決められます。魚やエビなど水族の形をした棺桶のほか、飛行機や自動車など乗り物も作られています。
 
プロトプテルス・アネクテンス 学名:Protopterus annectens
分布:アフリカ北西部~中南部

鰓の機能が退化し、空気呼吸するための肺を持っています。このため、魚でありながら空気を吸わなければ生きていくことができません。乾季には水底に穴を掘り、泥の繭(まゆ)を作り、ふつうは1年のうち、7~8ヶ月間ほど休眠します。