国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

オセアニア(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年4月18日刊行
印東道子(国立民族学博物館教授)
石で蒸し焼きウム料理

ヤムイモの皮をむくバヌアツの女性たち

オセアニアでは、ウムと呼ばれるとてもダイナミックな料理方法が今でも使われています。地面を浅く掘った丸い炉(ウム)で蒸し焼きにする料理法で、大量のイモやパンノキの実、まるごとの豚も全部いっしょに料理できます。ウムの大きさは直径2メートルをこえるものもあり、調理する食材の量で大きさを簡単に変えることができます。底は10~15センチメートルぐらいの大きさの石でおおわれています。

料理法は簡単。まず、ウムの底に並べた石の上でまきをたくさん燃やします。大切なのは石が真っ赤になるくらい熱くすることです。その間に料理するものを準備します。タロイモやパンノキの実などの皮をむき、魚は木の葉で包みます。豚の場合は内臓をとりだして、いいにおいのする木の葉を詰めます。


バナナの葉で全体をおおって2時間くらい待ちます

まきが燃えつきて石が熱くなったら、バナナの葉をしいて食べ物を置いていきます。この作業は急がないと石の熱が冷めてしまうので、それまではおしゃべりしていた人たちも、急にだまってテキパキ仕事をします。並べ終わったら、上にも熱い石を置いてから、バナナやヤシの葉で全体をおおい、最後に土もかけます。できるだけ熱が逃げないようにするためです。

 

おいしそうに料理されたブタ、タロイモ(左奥)、パンノキの実(右奥)

できあがりが楽しみ!

これで料理は終わり。あとは2時間ぐらい待つだけです。おなべとちがって、こげついたりしないので、歌ったりダンスをしたり、好きなことができます。この方法だと、おおぜいの食事が一度に料理できます。

2時間後、土をどけてバナナの葉をめくると、おいしそうに色づいたブタやタロイモが出てきます。とてもやわらかく料理できるのがウム料理の特徴で、2時間も待ったかいがあります。今でも島のお祭りなどではウム料理を行い、みんなで分け合って食べる島があちこちにあります。

 

一口メモ

ウム料理は、オセアニア東部のポリネシア地域で広く使われた蒸し焼き料理法で、よい粘土がなくて土器を作れなかった島で発達しました。調理道具は必要なく、異なる食材を一度に大量に料理することができます。

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