国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

ルーマニア(1) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年5月30日刊行
新免光比呂(国立民族学博物館准教授)
年間の節目の行事

移動を始める羊たちを見守る牧羊犬

ルーマニアでは、春の訪れを告げる復活祭(イースター)が早春の喜びと楽しみを味わう大切な行事です。復活祭は、キリスト教のお祭りで、イエス・キリストの復活と春に新芽が芽ぶく植物再生のイメージとが重ね合わされます。春分を過ぎた満月後の最初の日曜日に行われます。
復活祭を彩る楽しい慣習の一つが、彩色卵(イースター・エッグ)です。観光土産用に町で売られる彩色卵は、工房で非常に美しく彩色されていますが、村では植物を煮出して自然彩色をする場合が多いようです。

この日を境に


夏営地での乳搾りは毎朝夕の仕事

毎年日にちが移動する復活祭とはちがって、4月23日と決められている聖ゲオルギウス祭は、農耕の季節の始まりを告げる祭日です。この日を境として、耕作と播種(種まき)が行われます。同時に、バルカン半島からカルパチア山脈にかけての山岳地帯では、羊の群れが冬営地の村から夏営地の山地へ移動を開始する日とされています。

羊たちはそれぞれの家から一か所に集められ、羊飼いに連れられて夏の放牧地へと出かけていきます。出発の前には村の人たちが野山に集い、司祭が家畜の成長をいのって儀式を行います。ロシアなどスラブ圏では、聖ゲオルギオスは春の自然力の象徴とみなされ、家畜とオオカミの保護者ともみなされています。

秋になると9月6日の聖母マリアの誕生祭に続いて、10月26日が聖デメトリオス祭です。遊牧生活の上では、この日は4月の聖ゲオルギウス祭と対をなし、夏営地に移動していた羊の群れが冬営地にもどってきます。11月になるとキリスト教の暦では死者の季節となり、11月1日は諸聖人の日、2日はすべての死者のための万霊節です。こうして1年が閉じられます。

 

一口メモ

もともと生命とその再生を表す象徴として卵は、広く世界で用いられてきました。特に復活祭では色を塗った卵を贈りあうことが習慣となり、また隠した卵を探したり、卵をぶつけ合ったりする子どもの遊びにもなりました。

シリーズの他のコラムを読む
ルーマニア(1)
ルーマニア(2)
ルーマニア(3)
ルーマニア(4)