国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

イタリア(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年9月5日刊行
宇田川妙子(国立民族学博物館准教授)
日曜日の食卓

家族総出でブドウの収穫をします=ローマ近郊で

イタリアというと、大家族がマンマ(おかあさん)を中心に食卓を囲んでいるという姿を、思いうかべる人は多いかもしれません。しかし、結婚するとたいてい家を出ますので、おじいさん・おばあさんと一緒に住んでいる人は少なく、両親と子どもという核家族が主流です。

ただしイタリアでは、はなれて暮らしていても、日曜日には親の家でお昼を一緒に食べる習慣があり、おじいさん・おばあさん、おじさん、おばさん、いとこまで、多くの人が集まります。


おじいさんたちに教えてもらいながら、ブドウの収穫の手伝いをする子ども

イタリアの食事は、とくにお昼には、フルコースが基本です。最初はハムやチーズなどの前菜、次にスパゲティなどのパスタ(またはスープやお米のリゾット)、そして、肉または魚の料理の順番です。そこにはサラダなどの野菜が付き、パンやワインと一緒に食べます。子どもたちの飲み物は水かジュースです。最後に果物などがあれば食べ、コーヒーを飲んで終わりです。日曜日の食卓は、それぞれの料理が2品以上になったり、食後にケーキが出たりして、大勢でおしゃべりをしながら1、2時間、食事を楽しみます。

何かあったらすぐに助け合う

「毎週、親の家に行くのは面倒」という人もいますが、子どものころからこうした食事会を重ねることで、家族のきずなは強まります。遠くに住んでいても、長い夏の休暇は故郷で過ごしますし、日曜日以外の日も、ひんぱんに電話をしあいます。そして、何か困ったことなどがあると、すぐに助け合います。彼らにとっての家族とは、一緒に住んでいる人ではなく、こうして一緒に食事をする人たちのことなのです。


日曜日、女性たちは集まった家族のために昼食用のパスタを手作りします
 

一口メモ

イタリアでは、感激したりおどろいた時に「マンマミーア」とよくいいますが、これは「私のお母さん」という意味です。

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