国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

カザフスタン(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年10月10日刊行
藤本透子(国立民族学博物館助教)
マイナス40度の長く厳しい冬

雪の草原にぽつんとある村。冬には、街と村を結ぶ道も閉ざされがちになります。

10月ともなると、カザフスタンでは初雪が降ります。冬は長く厳しく、マイナス40度まで気温が下がり、あたりが見えないような吹雪が数日にわたって続くこともあります。街と村を結ぶ道も、雪と氷で閉ざされがちです。

吹雪が晴れて青空が広がったある日のこと、私はバスに乗って隣村まで出かけることにしました。村長さんから食事に呼ばれていたからです。朝早く、寒気の中をバス停で長い間、待ちましたが、バスは来ませんでした。遠くの街で故障してしまったようです。お昼にもう一度出かけましたが、やっぱりバスは来ませんでした。隣村まで行くバスは1日2便だけです。

極寒の中 歩いて…


寒さの厳しい日には、樹氷がきらめきます

あたりは広大な草原なので、11キロメートルはなれた隣村が遠くにはっきり見えました。見えているのにたどり着けないことがとてもくやしくなり、1人で歩いていくことにしました。マイナス5~6度で、雪の草原は日の光にかがやいていました。羊の毛皮で作った分厚いコートを着て、ところどころ深い雪に足をとられながら進みます。2時間半かけてたどり着いたときには、汗だくになっていました。村長の奥さんはおどろいた顔をしましたが、温かくむかえてくれました。

その日はとめてもらい、翌朝に家に帰ると、心配していたおじさんとおばさんから真剣にしかられました。「どうして歩いて行ったんだ?オオカミに食べられたらどうするんだ!」というのです。冬にはオオカミが家畜をおそうこともあり、雪原でオオカミにあってしまっていたら命が危なかったのです。


かべにかざられたオオカミの毛皮(右から2、3番目)。春を祝う祝祭にて
 

一口メモ

カザフスタンの草原には、オオカミのほかにも、キツネ、ウサギ、マーモット、レイヨウなどたくさんの動物が暮らしています。

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