国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

ベトナム(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年5月21日刊行
樫永真佐夫(国立民族学博物館教授)
ネコとネズミの追いかけっこ

いろりのそばで暖をとるネコたち

みなさん、どうして干支にねこ年がないのかは昔話で知っていますよね。実はベトナムの干支には、うさぎ年がなくて、かわりにねこ年があります。でも、ネコがネズミと仲が悪いのは、ベトナムも同じです。

ベトナムの黒タイの村に行くと、よくネコを飼っています。家族が苦労して作ったお米を食べにくるネズミを、ネコが退治してくれるからです。


食事が終わってテレビに見入っている子どもたちとネコ

黒タイの村では、ねる前、板戸や窓を全部しめて明かりを消すと、家の中がまっ暗になってしまいます。すると、それを待っていたネズミが、わずかなすきまから家に入ってきて、ふくろにつめているお米や、台所の残飯などをあさります。それにネコが気づくと、家の中ですさまじい追いかけっこがはじまります。まっ暗やみの中で、動物たちがところかまわず木のゆかをふみならして走りまわる音は、きっとみなさんの想像以上に、そうぞうしいものですよ。でも、それだけネコががんばって働いてくれているんですからね。

「ネコはこたつで丸くなる」って歌が日本にあるように、ネコはあたたかいところが好きです。ですから、寒い日など、ネコはいろりの火のそばでよくねそべっています。

火は食事をつくるのに、また体をあたためるのに不可欠ですが、危険なこともありますよね。だから、いろりには火の番をしてくれる神さまがいます。その神さまとネコが仲良しなら、ネコは家にずっといてくれると、昔の人は考えました。たまにネコが出ていっちゃうのは、神さまとケンカしたからなんですよ。


ベランダの米袋の上でひなたぼっこするネコ
 

一口メモ

村の黒タイの家では、たきぎをいろりにくべて火をたいています。毎日たきぎを山にとりにいくのはたいへんな労働です。

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