国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

都市を歩く(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年6月18日刊行
出口正之(国立民族学博物館教授)
パブリック・アートに注目

イタリアのミラノの建築の一部。彫刻が並んでいます。

目的を定めないで都市を歩くと、美術館に入らなくても、思わぬ芸術に出会うことがあります。今回はわたしが出会った芸術を紹介していきましょう。
 建築物は都市を歩くうえで、見逃せない芸術です。建物をよく見ると、いろいろなところに装飾が施されていることがあります。中には本格的な彫刻が町にあふれている都市もあります。
完成までに500年
イタリアのミラノは彫刻があふれている都市です。右上の写真の建物には、宗教的な彫刻が側面にたくさん彫られています。実はこの建物は完成までに500年もかかったといわれています。


テルアビブの建物。「白い都市」と呼ばれています。

それに対して、イスラエルのテルアビブには白くて、淡白なデザインの建物が非常に多いことに気がつきます。=写真左。これらは「テルアビブの白い都市」としてユネスコの文化遺産に登録されました。一時期、ドイツの多数の建築家がテルアビブに移り住み、競って優れた建築物を残したことに由来します。二つの建築物の装飾に関する考え方が、大きく異なっていることがわかると思います。

 

カナダのトロントの「壁画」

建築物だけではなく、ちょっとした芸術作品も面白いですね。右の写真は壁に描いた絵「壁画」と呼ばれる芸術です。こうしただれの目にも触れることができる芸術を「パブリック・アート」(公開された芸術)といいます。都市を歩くときには、このような「パブリック・アート」にも注目して見てください。

 

一口メモ

人間の文化は過去からの集積で成り立っています。大都市を歩いていろんなものにふれると、歴史の勉強がしたくなります。

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