国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

エジプト(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年7月23日刊行
西尾哲夫(国立民族学博物館教授)
1000年前から伝わる物語集

ラバーブとよばれる楽器を奏でながら昔話を語ります

みなさんはふしぎなランプやジン(魔人、ディズニー映画ではジニー)が登場する「アラジン」や、世界中の海を冒険してまわる「船乗りシンドバッド」の話を聞いたことがあるかもしれません。漫画や映画でも知られているこれらの物語は「アラビアンナイト(千一夜物語)」というとても長い物語集に入っています。

アラビアンナイトは、今から1000年くらい昔に元のかたちができたといわれています。その後、インド、イラン、シリア、エジプトなど、さまざまな国で語りつたえられてきたお話が集められて、どんどんふくらんでいきました。その中には、ベドウィン(アラブ遊牧民)が出てくるお話もあります。

かつてのベドウィンは砂漠を移動しながら暮らしていましたが、今は農園や果樹園のそばに家を作って暮らすことが多くなりました。ラジオもテレビもあるのですが、子どもたちはお話を聞くのがだいすきです。


イスラム教ではジンはけむりのでない火から創造されたということになっています。(エドマンド・デュラック画)

お話が終わるとおまじないの言葉

わたしが泊めてもらっていた家でも、暗くなると一家の主婦がいろいろなお話を語りきかせてくれました。砂漠にいるときならテントの中に入り、家の中でお話を聞くときは家中の窓を閉めます。お話が終わるときには、「あなたの安全をいのります」ということばがはいりました。これは、お話に夢中になっている心に、ジンが入ってこないようにするためのおまじないなのです。


教材キット「みんぱっく」の一つ「アラビアンナイトの世界」。「アラビアンナイト」を入り口に、アラブ世界の子どもたちの学校の様子も紹介しています
 

一口メモ

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