国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

インド(1) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年7月30日刊行
松尾瑞穂(国立民族学博物館准教授)
ヒンドゥー教 たくさんの神

大蛇を首に巻いたシヴァ神

南アジアにあるインドは、日本の9倍の面積、13億人の人口をもつ大きな国です。インドにはいろいろな宗教がありますが、8割の人はヒンドゥー教といわれる、インド独自の宗教を信仰しています。キリスト教やイスラーム教が、一人の神を崇拝する「一神教」なのに対して、ヒンドゥー教はたくさんの神様がいるのが特徴です。

 


ラーマ王に姿を変えて現れたヴィシュヌ神の人形(国立民族学博物館)

シヴァとヴィシュヌ

なかでも人気のある神様は、シヴァ神とヴィシュヌ神です。シヴァ神は、カイラーサという高い山の頂で、トラの毛皮の上に座って瞑想をしている姿でよく表されます。長い髪に、首には大蛇をぐるりと巻いて、とても野性的。ふだんはとても優しいのですが、おこると立ち上がっておどりだし、世界を破滅させる、こわい一面もあります。

 

一方のヴィシュヌ神は、インド世界の中心だと信じられているメル山(日本では須弥山といいます)に住み、黄金のかんむりや首かざりを身にまとった王様のような姿です。いろいろな姿に変えて人間の前に現れ、世界が悪い方向にいかないように、人びとを導ます。ブラフマー神を合わせて三大神と呼ばれますが、残念ながらブラフマー神の人気は高くありません。


ライオンの背に乗る女神ドゥルガー。手には武器を持っています

さて、そんな神様たちは、それぞれ動物が乗りものとして決まっています。シヴァ神はナンディーというオスの牛、ヴィシュヌ神はガルダというワシのような鳥に乗っています。ドゥルガーという戦いの女神の乗り物はライオンと、いかにも強そうです。神様だけでなく、神様の乗り物である動物も、ときに信仰の対象となり、人びとに敬われているのです。

 

一口メモ

ヴィシュヌ神は、富と幸運の女神ラクシュミーと結婚するために、クベーラという神様に借りたお金をまだ返し続けているんだって。

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