国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

インド(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年8月13日刊行
松尾瑞穂(国立民族学博物館准教授)
モダッカで祝う ガネーシャ祭り

ガネーシャ像を川に流しに行く子どもたち。最近はトラクターで運びます

インドには、動物の神様もたくさんいます。みなさんは、ガネーシャという神様の名前を聞いたことはないでしょうか。人間の体に象の頭がついたガネーシャは、シヴァ神とパールヴァティー女神の息子です。ガネーシャは学問や商売の神様として、熱い信仰を集め、また、何かを始める前にもお願いするとよいと言われています。

 


ガネーシャの大好物のお菓子、モダックを作るお母さん

ガネーシャはモダックという蒸しまんじゅうが大好きなので、お祭りの時には各家庭でモダックを作り、お祝いします。ガネーシャ祭りは、特に西インド地方で盛んで、ムンバイやプネーなどの都市では、町内ごとに巨大なガネーシャの像をたてたり、神話の一場面を再現した舞台をつくったりします。

 

子どもたちも祭壇のかざり付けをします。モダックを食べたり、夜おそくまで舞台を見て歩いたりと、とっても楽しい祭りです。祭りは10日間続けられ、最終日には大きなガネーシャの像を山車に乗せて、楽団やおどりとともに行列し、像を川や海に流しにいきます。家庭でお祝いした小さなガネーシャの人形も一緒に流します。

神さまにもエコ


お祭りの前は大忙し。家族総出でガネーシャ像を制作する職人さんたち

ヒンドゥー教では、流れる水がもっとも浄性が高いと信じられているので、川に流すのが最も望ましいのです。ちなみに、人が亡くなったときも、墓を作らず、火葬した後、遺灰を川に流して供養します。そんなに像を流したら、環境に悪そうだと思いませんか。実は今では川の汚染を減らすため、環境に優しい粘土や絵の具のガネーシャ像も売られています。神さまもエコが望まれる時代なのです。

 

一口メモ

ガネーシャはお父さんであるシヴァ神に頭を切られてしまったので、たまたま通りかかった象の頭をつけてもらったんだよ。

シリーズの他のコラムを読む
インド(1)
インド(2)
インド(3)
インド(4)