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みんぱく世界の旅

東南アジアの仏教(1) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年8月27日刊行
平井京之介(国立民族学博物館教授)
同じ仏教でも地域によって違い

タイ農村によくあるふつうのお寺

タイやラオス、ミャンマーなど、東南アジアの大陸部にある国々では仏教がさかんです。だいたい村ごとにお寺があり、赤や緑、黄などの色にぬられた美しい建物です。そこに、あざやかなオレンジ色の着物を着て、坊主頭にしたたくさんの僧や見習い僧が暮らしています。

インドで発祥 やがて二つに


ミャンマーのお寺にいた見習い僧

仏教は、今から2500年ほど前のインドで、日本で釈迦(ゴータマ・シッダールタ)と呼ばれる人物がはじめた宗教です。お釈迦様がなくなってから100年ほどたって、その教えをめぐって弟子たちのあいだで意見が対立し、二つのグループに分かれました。
その一つが後に南のスリランカ、さらに東南アジアへと伝わり、もう一つは北のチベットに、さらに中国、朝鮮、そして日本へと伝わりました。それぞれの地域で、風土や社会にあわせて発展し、その結果、東南アジアと日本ではずいぶん違う仏教ができあがったのです。


寝釈迦像はお釈迦さまが亡くなるときのポーズ

伝統を大切にする東南アジアの仏教は、お釈迦様がはじめた頃の仏教によく似ています。その最大の特徴は、一人一人が修行することを重視する点にあります。
ここでいう修行とは、滝に打たれたり、断食をしたりするような、荒々しい修行のことではありません。簡単にいえば、出家すること、すなわち、お釈迦様と同じように、家庭を出て僧になり、お寺で生活することです。規則を守り、ぜいたくではない生活をして、自分の人生を見つめ直す。これが東南アジアの仏教が教える修行法なのです。

 

一口メモ

見習い僧とは子どもの僧のことです。昔から、男子なら一生に一度は、家を出て、僧か見習い僧になることが理想とされてきました。

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