国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

イギリスのムスリム(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年10月1日刊行
相島葉月(国立民族学博物館准教授)
ハラール肉ってどんな肉?

アラビア語とウルドゥー語でハラール肉を販売中であることを記したお店=クリスチャン・ギュシェル撮影

インドやパキスタンをはじめとするイスラーム世界各地からの移民が暮らすイギリス。ムスリム(イスラーム教徒)の人口は、国教であるキリスト教についで2番目にまで成長しています。その証拠に、都市部のスーパーには、必ず「ハラール肉」の棚があります。レストランやスーパーは、フェアトレードやオーガニックと同様に、食材がハラールであることを明記しています。


ハラール肉の精肉コーナー。店主がスジアラビアで購入したというタイルが壁に貼られています=クリスチャン・ギュシェル撮影

ハラール肉はどのような肉だと思いますか?ハラールは家畜の種類ではなく、食肉処理の方法です。生きた家畜が健康であることを確認し、イスラム教の聖典聖典クルアーン(コーラン)の章句を聞かせながら頸動脈を切断します。ハラールはアラビア語で「(神に)許容されたもの」という意味で、物事が倫理的に正しい状態にあることを指します。1日5回の礼拝などの儀礼を通じて神の意に沿った生き方を目指すムスリムにとって、毎日の食事もハラールであることが重要なのです。

 

ペルシャ料理クビデ・ケバブ(長いハンバーグ)=相島香里撮影

筆者のアパートの近くにあった、南アジア系イギリス人が経営する小さな八百屋さんにもハラール肉の精肉コーナーがありました。ムスリムは豚肉を食べないので、羊の肉を使ったソーセージやハンバーグなど も売られています。イギリスの食べ物はまずいと言われていますが、こういった店で購入した食材は新鮮でおいしいことが多かったです。慈悲深き神に感謝して、ハラールな物を食べる日々が、ムスリムとしての幸せなのです。

 

一口メモ

ハラールの反対語はハラーム(禁じられたもの)。ビールやワインなどのお酒はハラーム。酔っ払うと神様のことを忘れてしまうからです。

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