国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

インドのラクダ(1) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年11月19日刊行
上羽陽子(国立民族学博物館准教授)
いくつかの家族で協力して牧畜

生まれて間もない子ラクダ(中央)とお母さんラクダ

みなさん、インドでヒトコブラクダが飼われていることを知っていますか。2013年の統計によると、インドには38万頭のヒトコブラクダがいます。ソマリアやケニアなどについで世界第10位です。

インド西部グジャラート州の最西に位置するカッチ地方は、年間降雨量が400ミリメートル以下の乾燥地帯なので、農業に向いていません。そのため、ラクダやヤギ、羊、牛、水牛などの家畜を飼って、その家畜のミルクや肉などを売って生活をしている牧畜民がたくさんいます。


お父さんラクダ

ヒトコブラクダは大きいのでいくつかの家族で力を合わせて牧畜をします。ラクダを飼うのがうまいと知られている牧畜民のラバーリーは、育てたラクダを売って、そのお金で生活しています。たとえば、かれらは4家族で200頭のラクダを飼っています。

群れの構成

乾燥地帯を歩くラクダの群れ

ラクダの群れには、お父さんラクダは1頭しかいません。あとは、お母さんラクダと子ラクダです。ラクダの子どもが生まれるとオスは2歳まで育てて売り、メスは子どもを産ませるためにそのまま飼います。オスのラクダがたくさんいると、メスラクダをめぐってけんかをしてしまうからです。

みなさんも飼っているペットの顔を覚えているように、ラバーリーの人たちも、すべてのラクダに名前を付け、顔も覚えています。ラバーリーにとって、ラクダは家族でもあり、自分たちの生活を支える糧でもあるのです。

 

一口メモ

カッチ地方は乾燥地帯。ラバーリーの人びとはラクダに草を食べさせるために、1年の半分以上は家から離れて外で生活をします。

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