国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

インドのラクダ(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年11月26日刊行
上羽陽子(国立民族学博物館准教授)
栄養たっぷりラクダのミルク

乳搾りをするラクダ飼い

ヒトコブラクダのオスは、働きものです。乾燥した地域は砂や小石が多く、自動車やトラックが入れないため、昔からラクダが運搬のために利用され続けてきました。現在は、舗装された道路が増えて、自動車が走れるようになりましたが、利益が燃料代よりも安い作物などは今でもラクダの後ろに台車を付けて運んでいます。そのため、賢く力があるオスラクダは、高い値段で取引されます。


荷物を運ぶオスラクダ。車輪は飛行機のタイヤを再利用したもの

ラバーリーの人たちは、ラクダを販売することを目的として飼っているため、ラクダを食べたりしません。かれらはヒンドゥー教なので、動物を殺したり食べたりすることが禁じられています。牧畜をしている間の食事は、1日5回のミルクだけです。ラクダのミルクは、ビタミンCが牛乳に比べて3倍といわれ、ビタミンBもたくさん入っています。しかし、ラクダのミルクは、牛乳よりも味が濃く独特のにおいがするので、この地域では販売はしません。

ミルクを使った食事

搾ったラクダのミルクのなかに米と砂糖をいれて沸騰させてミルクがゆを作ります

時にはラクダ飼いも、ミルク以外の食事を取ります。町に近づくと1人が、現金を持って雑穀の粉や米、砂糖などを買いに行きます。それらを使って砂糖を入れたラクダのミルクがゆや、粉をこねて焼いただけのパンを作ります。この食事は日々の暮らしの中での楽しみの一つです。

ラクダ飼いにとっては、一緒に移動しているラクダのミルクさえあれば、移動中に水などの飲み物を持ち歩く必要もないため、とても便利です。栄養たっぷりのラクダのミルクは、ラクダ飼いのパワーの源になっているのです。

 

一口メモ

ラクダ飼いはラクダの群れを「ヒューフュー」と口笛を吹き、かけ声で操ります。ラクダはその声で曲ったり止まったりします。

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