国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

インドのラクダ(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年12月10日刊行
上羽陽子(国立民族学博物館准教授)
運搬以外の仕事

子ラクダを群れから引き離すラクダ飼い。中央にみえる背の高いオスラクダを返すときに、子ラクダ一頭つける約束をしていました

1980年以降、インドのラクダの飼育数は徐々に減ってきています。道路が整備されて運搬のためにラクダの必要がなくなっていることが原因の一つです。しかし、ラクダは運搬のためだけの家畜ではないため、飼育され続けています。

 

ラクダ部隊=photo by F.M.Oki、国立民族学博物館提供

インド西部の乾燥地帯は、パキスタンとの国境地域に位置するため、国境の警備時に、警察や軍隊がラクダに乗って移動する必要があります。インドでは共和国記念日などには、盛大なパレードが行われます。その中には、軍隊のラクダ部隊が、着飾ったラクダにまたがって勇ましく行進している姿を見ることができます。これは、インドで古くから力のある王様は、ラクダ部隊をつくることができ、戦で勝利してきた歴史があるからです。

 
良いラクダを育てるため

ラクダのオークション。中央のラクダの値段を競り合っています

ラバーリーは、親戚などのネットワークを通じて、賢く力があるオスラクダを貸し借りして自分の群れに入れて子どもをつくります。そのため、ラバーリーには、警察や軍隊などからよいラクダがいないか問い合わせがきます。また、カッチ地方では、良いラクダを見分けるために、ラクダのレースやオークションも開催されています。

まだまだインドではラクダを必要としていますが、ラクダ飼いに尋ねると、多くの人は自分たちの子どもにはこの仕事を継がせたくないと言います。毎日、外で暮らし、体力を使う仕事なので、子どもには学校に行って勉強して、他の仕事についてほしいと願っています。それだけラクダを育て続けることは大変な仕事なのです。

 

一口メモ

古くから乾燥地帯の戦闘のときに、ラクダは馬などより背が高く、高い位置から攻撃ができるので、重宝されました。

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