国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

エチオピア(1) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年12月17日刊行
川瀬慈(国立民族学博物館助教)
路上で働く子どもたち

チューインガムやティッシュペーパーを売る子どもたち

エチオピアは日本の3倍ほどの国土面積を持ち、80以上の民族、100を超える言語を持つといわれています。近年、めざましい経済成長をとげるエチオピアですが、急激な都市化のなかで、職の選択肢が少ない地方から都会へやってきて、路上での経済活動を中心に生活する子供たちがいます。

初めてエチオピアに来た人が、都会を歩いていてまず気がつくのは、働く子どもの多さです。靴磨きの集団や宝くじ売り、ティッシュペーパー売りが路上を所狭し駆け回っています。

 

時計、財布、靴下をきれいに並べて売っています

胸の前に箱を抱えた移動雑貨売りの子どもたちも目立ちます。箱の中をみせてもらうと、ビスケット、チューインガム、たばこ、あめ、お香、マッチ、ライター、整髪料などが入っています。品物を整然と並べた自分の背丈ほどの大きな木の板を背負って歩き回り、商売を行う子もいます。みな本当に働き者です。商売を行う中で、少しずつ品物を増やしていき、できるだけ規模の大きな「移動商店」を持つことを目指します。

 
仲間同士助け合いながら

靴磨きをしている子どもたちもいます

ただし、路上には大切な品物を盗む泥棒もいるので気が抜けません。巡回する警察官や、酔っぱらいに目をつけられると、いざこざになるので気をつけねばなりません。路上を経済生活の基盤とする子どもたちが、故郷の村と密接につながりながら、仲間同士で経済的に支えあい、自分たちの身を守る組織を発達させることもあります。子どもたちにとって路上は、多種多様な経済活動を繰り広げる場であると同時に、社会的な規範や価値観を学ぶ場でもあるのです。

 

一口メモ

路上販売初心者の子どもは、まずティッシュペーパーやガムなどを売ることから始めて、少しずつ品物を増やしていくようです。

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